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開かれたゲート 襲来、恐竜デジモン! 「はぁ……もぅ、お腹一杯だぁ。食べられないよぉ……」 「……」 機動六課隊舎、食堂。 床にあおむけに寝そべるアグモンを見ながら、ヴィータはやや唖然としていた。 食べ過ぎて腹を風船のように膨らませて寝る、等と言う漫画等で使われる古典的な光景を実際に目にするなんて思わなかったからだ。 しかも、それが黄色い巨大なトカゲなのだから、かなり貴重な光景である。 「すげぇ美味かったけど……卵焼きがあればもっと良かったのに」 「よくこれだけ喰っといて文句言えるな!?」 テーブルの上、山積みになった皿を指さしながらヴィータが吠える。 総合的な量で言えば、普段から大食いである青髪の少女と赤い髪の少年には劣るが、それでもかなりの量を平らげている。 これだけ食べて文句を口にするとは、図々しいにもほどがある。 「……ところで、兄貴はどこ連れてかれたんだ?」 重たそうに体を起こし、床に座り込んだ状態でアグモンが問う。 今、食堂にいるのはヴィータとアグモンだけであった。 はやてとシグナムは、大を連れて何処かへと立ち去っている。 「あぁ、心配すんな。ちょっと色々聞かなきゃいけない事あるから別室で話してるだけだよ」 「ふぅん。それ、どれぐらいで終わるんだ?」 「さぁ? そんなに長くはなんねぇと思うけど……ぼちぼち終わる頃じゃねぇの」 壁の時計を見やれば、三人が食堂を出て十数分少々経っている。 何事もなければ、もうそろそろ話も終わっている頃だろう。 (しかしまぁ、随分と変わったなぁ) アグモンを見ながら、ヴィータの脳裏に浮かぶのはあの巨大な竜人であった。 あの姿からアグモンになったのは間違いないだろうが、それにしても凄い変わりようである。 魔導師が使役する使い魔なら、元になった獣としての姿の他に人間の姿を持つ者が一般的であるが、それは変身魔法によるものだ。 だが、アグモンからは魔力的な気配を全く感じないのだ。 (あの大って奴からも魔力全然感じなかったしな……何なんだ、ほんと) 少々、と言うには腑に落ちない点が多すぎる。 魔法が一切かかわっていないあの変貌ぶりは、一体何なのだろうか。 どれもこれも、はやてとシグナムが大から話を聞いてくれば、嫌でも答えが解るだろう。 一方、はやてとシグナムは一通りの質問を終えていた処であった。 「成程なぁ……で、大門君とアグモンはそのデジタルワールドを五年間旅してた、と」 「あぁ。それで間違いねぇよ……ふぅ、ご馳走さんでした」 差し出されたカツ丼を平らげ、箸を丼に置く。 何故カツ丼なのかは、一応取調べの真っ最中であった事から推して知るべしである。 なお、シグナムは「取り調べ言うたらカツ丼やろ!」という幻聴が聞こえたと、後に語る。 (で、シグナムはどう思う?) (そうですね……嘘は言っていないと思います) (うん、私もそうは思うけど……話が話やしな) 隣に控えるシグナムへ念話を飛ばす。 正直、大の話は素直に信じがたい部分があるとはやては感じていた。 時は五年前。大の出身世界である人間界へと、デジモンと呼ばれる生命体が住まうデジタルワールドを隔てる次元の壁が歪み始めた事から始まると言う。 一人の男が巻き起こしたデジモンと人間の戦争及び、次元の壁の完全崩壊による双方の世界消滅の危機と言う、スケールの大き過ぎる話だ。 彼が連れていたアグモンは、共に闘うパートナーであり子分であり、最高の相棒であると言う。 (ここ五年に、そんなデカイ事件は起きて無いよな?) (えぇ……少なくとも管理局が把握してる世界では無かった筈です) (せやなぁ……把握して無い世界の事としても、次元崩壊レベルの事やったみたいやし) (本局の方に何らかの情報が残ってる筈ですね。後で調べておきます) (ん、頼むな) 念話を終え、意識を大の方へと向ける。 湯呑に残っていたお茶を飲み干し、満足したように笑顔を浮かべている。 取り調べと言う事もあり、若干緊張していたこちらが馬鹿馬鹿しく思える程だ。 (ま、どのみち嘘つくようなタイプでもないやろしな) 何故だか、そう確信できる。 局員になってから数年、それなりに人を見る目はあると自負するはやてに、彼は悪人に見えなかった。 理由を問われると悩むが、強いて言えば彼の目を見たからかもしれない。 愚直なまでに真っ直ぐな目をしていたのが、理由と言えばそうなるだろう。 「さて、聞きたい事は聞いたし……もう時間も遅いし、そろそろ休もうか」 「ん? もう終わりか?」 「うん。ご協力どうも……シグナム、客室に案内してあげて」 「はい。では、ついてきてくれるか?」 「あぁ、わかった」 シグナムに連れられ部屋を出る大を見送り、はやては一人で自分の仕事部屋へと戻る。 質問の内容を纏めて報告書にし、提出すると言う仕事がまだ彼女には残っている。 それと、大とアグモンの身柄を保護する正式な許可と彼らの出身世界捜索依頼を出さねばならない。 あの二人は旅の最中である世界、デジタルワールドへの帰還を望んでいるのだから。 (にしても、アイツはなんやったんや……) 思い浮かべるは空間を歪めて出現した、あの赤マントの巨人だ。 自分とシャイングレイモンを軽くあしらい、意味深な言葉を残して立ち去っていった未知の存在。 いくら自分が本気を出せない状態であると言っても、手加減なしで放った砲撃魔法が一切通じなかったのは軽くショックだった。 知っているような素ぶりを見せていた大も、実際良くは知らないと言う。 ――こっちの世界に飛ばされる直前まで戦っていた と彼は言っていた。そして、あの巨人との戦いの最中にミッドチルダへ飛ばされてきたのだと。 (何にせよ、情報が足らんなぁ……) 大の言葉はともかくとして、あの巨人の言葉は迂闊に信用する訳にもいかない。 かといって自分なりの考察をしてみようにも情報が足りない、足りなさすぎる。 単なる次元漂流者を保護、だけでは済みそうにないなと思いながら、がっくりとはやては肩を落とす。 思っていたよりも、面倒な事になりそうだ。 翌日、一晩ぐっすりと眠った大とアグモンは用意された朝食を取った後、特にする事もなく敷地内をぶらぶらと歩いていた。 六課隊舎の敷地内にいるなら自由にしていて良い、と言われたがそれはそれで退屈な物である。 「暇だなぁ、兄貴」 「暇だなぁ、アグモン」 デジタルワールドにいた時は毎日何かしらやる事があったし、見る者全てが目新しいという新鮮さがあった。 この世界で見る物も、色々と目新しい物はあるのだが……何と言うか面白味が足りない。 早い話、彼ら二人の生きがいとも言うべき事が、最も楽しめる事が現状出来そうにない。 「「暇だよなぁ……」」 忙しそうにあちこち動き回っている人々を見ていると、微妙に居心地の悪さすら感じる。 今の自分達の立場等は色々教えて貰ったが、それも正直良く分からない。 とりあえず、ここが数えるのも馬鹿馬鹿しい程に存在する異世界の一つで、それらを守る組織があるという事は理解した。 魔法と言う、ゲームの中でしか縁が無い物まで存在するとは思わなかったが。 「んお?」 何か面白そうなものでも無いかと、周りを見やるアグモンの目に留まったのは、二人の人影だった。 一人は見覚えのある桜色のポニーテールをした女性、もう一人は見知らぬ黒髪の男。 何かあるのか、二人して海の方を眺めている。 「兄貴、あっちになんかありそうだ」 「ん? 確かになんか見てる奴がいるな……暇だし、行ってみるか」 とりあえずの暇潰しにはなるだろうと、そちらへ向かって歩く。 やがて、大達の気配に二人が気付いたのか海の方へと向けていた顔を、後ろへと向ける。 やはりというか、桜色の髪をしたのは見覚えのある、昨日部屋まで案内してくれた女性であった。 「よぅ、確かシグナムって言ってたっけ?」 「お前達は……確か、大門大とアグモンだったか。どうしたんだ、こんな処で?」 「いや、とりあえずこの建物の敷地内なら好きに行動していいとか言われたけどやる事無くて暇でさ……適当にぶらついてたんだよ」 「で、こっちに野次馬しにきたって訳か」 口を開いた男の方へ顔を向ける。 背丈や体格は大とあまり変わらないであろう、黒髪のどこか軽そうなイメージのある男だ。 「っと、俺はヴァイス・グランセニックってんだ。ほんのちょっとの間だろうが、よろしくな、大門大」 「あぁ。ところで、何見てたんだ?」 「新人達の訓練だ」 そう言って空中に浮かぶモニターを指さすシグナム。 大とアグモンもそれにつられてモニターを見ると、四分割された映像の中をTシャツ姿の少年少女達がそれぞれ激しく動き回っている。 右腕に装備したガントレットでハンマーを構えた子供と殴り合う青髪の少女やら、二丁拳銃で光弾を撃ち落とすオレンジ色の髪の少女。 槍を構えた赤髪の少年に変わったグローブをはめた幼い少女が、それぞれ縦横無尽に激しく動き回っている。 映像の背景からして森の中、正面にある海の上のあそこで行われているのだろう。 「あれ? 昨日あんなところに森なんてあったかな?」 「あれはうちの訓練用フィールドだ。どういう原理かは教えられんが……まぁ、ちょっと大げさな立体映像だと思えば良い」 「へぇ……すっげぇなぁ」 返事をしながら、大とアグモンの視界は画面にくぎ付けとなっていた。 見た処、画面に映っているTシャツの四人は自分よりも年下だ。 特に赤髪の少年と桃色の髪をした少女など、どう見たって十歳前後の子供だ。 それがああも派手に激しく動き回る光景と言うのは、見ていて確かに面白い。 むしろ、かつて一緒に戦った仲間の少年を思い出して懐かしさすら感じる。 「なんだ? 随分と熱心に見てるじゃねぇか」 「いや、アイツ等子供なのにすげぇなって思ってさ」 「イクト思い出すな、兄貴」 「イクト……あぁ、お仲間か?」 アグモンの懐かしむような口調で察したヴァイスの言葉に、大は頷く。 「あぁ……最後にあった時は、あいつぐらいの歳だったかなぁ」 と言いながら大が視線を向けるのは、赤髪の少年だ。 小柄な体を活かして縦横無尽に動き回る様は、まさしく記憶の中の彼を思い出させる。 しかし、モニター越しで訓練とは言え戦闘を見ていると、どうもウズウズしてくるのは性分故だろうか。 それはアグモンも同じようで、どうも落ち着かないようである。 「ほぉ……自分も混ざりたくて仕方が無い。と言ったところか?」 「ぁん?」 大の心情を見抜いたシグナムが、不敵な笑みを浮かべる。 何と言うか、自分も戦闘に飢えてますとでも言いたげな笑顔だ。 「その目に身のこなし……かなり場数を踏んでいるのだろう?」 「だから何だってんだよ?」 「模擬戦程度でいいなら、今からでも付き合うぞ?」 何処から取り出したのか、銀色に光る刃を持った剣を持って言うシグナムの顔は、物凄く楽しそうだ。 その隣にいるヴァイスと言えば、やや引きつり気味な顔を見せてる。 数秒程二人の顔を交互に見やり、大はモニターへと顔を向き直して一言。 「俺は女は殴らねぇ主義だ」 「戦いの場に男も女も無いだろう?」 「るせぇ。男は絶対女は殴らねぇもんだ」 「ふむ……仕方ない」 大の意思をくみ取り、シグナムは己の剣……レヴァンティンを仕舞いこむ。 待機状態、ペンダント状の形態へと戻して首にかけ直す。 「気が向いたら、何時でも声を掛けてくれ」 「だから、女は、殴らねぇって、言ってんだろうが」 「安心しろって。保護した漂流者相手に魔導師が模擬戦とはいえ戦えるわけねぇだろ、冗談だ冗談」 「あぁ、冗談だ」 「さっきまで目が本気だったぞ、お前」 あまりシグナムには関わらない方がいいかもしれない。 そう思いながらモニターを見ていると、もう訓練も終わったのか何やら全員集まって話をしている。 「お……そろそろ昼か。どうだ、一緒に喰うか?」 「ん? もう昼か……」 「兄貴、俺腹減ってきたよぉ」 「そうだな、俺も腹減ってきたし……一緒に食わせてもらうか」 ヴァイスとシグナムに連れられ、二人はその場を後にする。 「なぁなぁ、卵焼きは出るのか?」 「卵焼き? いや、どうだったかな……」 クラナガン郊外、廃棄都市区画。 街の人々から半ば身捨てられ、復興の目途も経たず、管理局員の訓練場として扱われる事があるだけの無人地帯は、子供達の遊び場でもあった。 大人に危ないから近づくな、と言われれば近づいてしまうのが子供の性であろうか。 「もういいか~い?」 「「「ま~だだよぉ~!」」」 無邪気にかくれんぼに興じる四人の子供達。 その一人の少女が路地裏を抜け、かつては繁華街として賑わったであろう大きな通りへと出た時であった。 「……ん?」 男がいた。 それなりに気を使って整えてあるやや長めの黒髪をした、白衣を纏った小柄な体躯の優男だ。 異様に不気味な雰囲気を纏った男に、少女は恐怖と好奇心を覚えて物陰に隠れながら見やる。 「んふふふ……」 堪え切れないといった風の笑いを漏らし、男が通りに設置するのは金属製のボールだった。 中央にオレンジ色の光を灯した、無骨な外見のボールのような形状をした機械を設置する。 「よしよし、これで良し……」 ボール状の物は長い月日を掛け、男が以前に開発した物を更に改良した装置だ。 すでに協力者の手によって何度かの実験は成功し、今回はまた違った運用法を行う為の実験である。 この実験が成功すれば、男の計画は大きく前進する。 「では、始めましょうか」 装置の設置場所から数百メートル程離れ、男は白衣のポケットからスティック状の機械を取り出す。 先端の赤いスイッチに指を置き、眼鏡の奥に光る狂気に染まった瞳をぎらつかせ、声高々に叫ぶ。 「イッツ、ショウタァイムッ!」 スイッチを押すと共に、設置した装置が爆発。 そして、世界の壁が壊れた。 機動六課の面々が思い思いの昼休みを過ごしている最中、非常事態を告げるアラームが鳴り響く。 自室で食後のコーヒーを楽しんでいたはやては、脱いでいた上着に袖を通しながら、駆け足で司令室へと駆け込む。 すでに集まっていた六課の後方支援部隊、ロングアーチの面子へと状況を問う。 「何事や!?」 「クラナガン廃棄都市区画にて、空間の歪みを確認しました」 「二日連続でやて!?」 自身の椅子へと腰かけ、取り急ぎまとめられたデータを空間モニターに表示させて指示を飛ばす。 「周辺の部隊に通達! スターズとライトニングは!?」 「通達はすでに終えています。スターズ、ライトニング両部隊も副隊長とフォワード陣がすでに現場へ向かっています」 「ん」 グリフィスの手際良い仕事に頷きながら、はやては片手で通信パネルを表示し六課所有のヘリで待機する仲間へと連絡をする。 正面に表示される二分割の画面に映るのは、高町なのはとフェイト・T・ハラオウン。 十年来の親友にして、スターズ小隊、ライトニング小隊をそれぞれ率いる六課幹部であった。 現在、二人とも別任務で隊舎を離れていたのだ。 「なのは部隊長、フェイト部隊長、二人とも現場にむかえる?」 『こちらスターズ1。うん、大丈夫!』 『こちらライトニング1。ちょっと現場から遠いけど、今からむかう』 「お願いな。ちょっと、嫌な予感するんよ……」 そう言いながら、はやての脳裏に浮かぶのは昨晩の出来事。 大とアグモン……そして、あの巨人が出現した時も空間の歪みが起きていた。 それ自体なら、次元世界全体で見ればそう珍しい事でも無いが二日連続で、同じクラナガンで起きるなど異常でしかない。 時空管理局発祥の地であるミッドチルダは、他世界に比べても安定している筈なのだ。 (何か起きようとしてるんか……? カリムの予言の事と関係も……) 背筋に嫌な悪寒が走るのを感じながら、はやてはモニターに表示されるデータを睨む。 この悪寒が、ただの考えすぎで終わってほしいと思いながら。 「現場にヘリが到着。映像きます」 「ノイズが酷いけど……よし、これで見え……ちょっと、何これ!?」 そんな希望は、オペレーターの一人であるアルトの声により無残に打ち砕かれた。 六課保有の人員輸送ヘリが現場に到着した時、目にしたのは異質な光景であった。 廃棄都市区画の大通りにて、底無しの闇につながっているような穴が大きく口を開けていたのだ。 ヘリパイロットとしてその光景を見やるヴァイスは、空間や次元に関する知識は局員の一般認識程度の物しか持っていない。 だが、それでも一目でわかった。 「これは、ヤバいんじゃないのか……」 だってそうだろう。 その穴は何かのエネルギーを発しているかのように、時折スパークが起きている。 おまけにその穴の中から、巨大な獣が這い出して来ているのだから。 「なんだありゃ……獣、ってより竜みたいだが」 「それより、恐竜っぽいな」 何時の間に来たのか、コクピットの窓より下を覗きみるヴィータが口を開いた。 「恐竜って、確か副隊長達がいた世界の生物でしたっけ?」 「あぁ。とっくに絶滅した古代生物で、あたしも本でしか見た事ねぇけどな」 それにしたって良く似ていると呟きながら、ヴィータは冷静に恐竜達を観察する。 数は四体。皮膚の黒い二足歩行の個体と、肩から巨大な角を生やした緑色の皮膚をした個体が二体ずつ確認できる。 全長は五メートル前後といった処だろうか。どれも見るからに凶暴そうな雰囲気を持っている。 「ヴィータ、何をしている?」 「わぁってる。すぐ行くよ……ヴァイスは、あたし等が出たら一度離脱しろ。相手が相手だ、何してくるかわからねぇ」 「了解。さっさと安全圏に引っ込みますよ」 後方のキャビンにて、すでにバリアジャケットを展開していたシグナムと部下達が待機している。 ヴィータも即座にデバイスを起動。バリアジャケットを纏って指示を出す。 「まず、あたしとシグナム副隊長が出て相手の出方を見る。場合によっちゃ、そのまま前衛張るからお前らは支援に回れ」 「相手は完全に未知の存在だ。何をしてくるかわからん、油断するなよ」 「「「「はい!」」」」 部下四人の返事に満足げに頷くと共に、ヴァイスへ声を駆けてヘリのランプドアを展開させ、ヴィータとシグナムは空へと飛び出す。 空を舞うように飛びながら、あらためて肉眼で目標を見やる。 見れば見る程、本で見た恐竜に似ている。 「魔力反応は感じない……となると、召喚の類では無いな」 「あぁ……ホントに何だ、こいつ等」 出撃はしたが、いきなり攻撃する訳にもいかない。 見た目は凶暴そうではあるが、大人しい性質ならば這い出てきた穴へと上手く誘導して返せるかもしれないからだ。 もしかすると、何処かにこの恐竜達を呼び出した何者かがいるかもしれないから、それから話を聞いてからでも、とも考える。 だが、そんなヴィータの思考は黒い恐竜の行動で無意味と化す。 「「っ!?」」 二人に気付いた恐竜が首を持ち上げ、その口から炎を吐き出したのだ。 標的は無論ヴィータとシグナム。即座に身を翻して炎を避けるが、その行動で完全に敵と認識されたか残り三体も二人へと敵意を込めた視線を向ける。 「チッ……やるしかないか」 「つか、火ぃ吐くって……どこの怪獣だよ!」 攻撃されたのならば仕方ないと、二人はデバイスを構えて恐竜達へと突撃する。 先陣を切るシグナムは、緑の恐竜の腕から繰り出される大ぶりの拳を回避し、両手に握る刀剣の刃へ魔力を這わせる。 狙うは両肩より伸びる、最大の武器であろう角の付け根。 「はぁぁっ!」 気合いと共に振り抜いた刃が風を引き裂き、音よりも早く恐竜の角を両断する。 地響きを立てながら大地へと墜ちる角を横目で見やり、シグナムはもう一本も斬り捨てんと身を翻し。 「なっ!?」 ついさっき斬り捨てた筈の角が、何事も無かったのように再生している光景に目を疑った。 生物としてあり得ぬ程の速度で行われる再生。一体、この恐竜達は何なのだと思う間もなく飛んでくるのは恐竜の拳。 避けきれないと判断して左腕を突き出し防御フィールドを展開、その拳を受け止める。 「ぐ、ぅう!?」 シールドの上より襲い掛かる衝撃を受けきり、シグナムは後方へと飛び退いて小さく息を吐く。 左腕に若干の痺れを感じるが、この程度ならば剣を握るのに問題は無いだろう。 「防御の上からでもあの衝撃、か……流石に直撃を受ければ不味いな……だが」 だからと言って絶望的な差を感じる程でも無い。 体格差から予想できる恐竜の重量等を考えれば、驚異的な破壊力を持つだろうし、直撃は死へ直結するかもしれない。 だが、今の攻防を持って見抜く。 「ヴィータ!」 「あぁ! こいつ等、図体でかいだけで……っ!」 黒い恐竜二体を相手取り、小柄と言うよりも幼い体躯を活かして縦横無尽に飛び回るヴィータが吠える。 その手に握る鉄槌型デバイス、グラーフ・アイゼンを振り上げて狙うは恐竜の下顎。 「たいした事はねぇ!」 蟻と象程はあろう体格差を無視した強烈な一撃が、黒い恐竜を殴り飛ばす。 悲痛な悲鳴をあげて倒れる黒い恐竜から即座に目を離し、返す刃……否、返す槌でもう一体の側頭部を叩く。 確かに一撃の威力は強力だが、動き自体は見きれぬほどの速度も無く、攻撃も防げないというレベルでは無い。 つまり、動きに注意してさえいればどうにでもなる相手と言う事だ。 「適度にボコって捕縛するぞ、シグナム!」 「あぁ」 勝利を確信し、二人の騎士はまるで踊る様に武器を振るい、四体の恐竜を相手取る。 いくら炎を吐き出そうが、拳を振り上げようが、当たらねばその破壊力も無意味でしか無い。 小さき人が巨大な竜を手玉に取る光景を見やるのは、遅れてヘリから降り立った四人の少年少女達だった。 「副隊長達、凄い……」 「体格差関係なしね……」 スバル・ナカジマとティアナ・ランスターは目を点にし、呆れたような感心したような声を出す。 はっきり言って、自分達の支援なんていらないんじゃないかと思えるほどに、上司二人は四体の恐竜を圧倒しているのだ。 恐竜達が動く度、副隊長二人の攻撃で地面に斃れる度に起こる激しい地響きがここまで伝わってくる。 「って、ぼぉっとしてたら駄目ね。皆、副隊長達の支援行くわよ!」 「おう!」 「「はい!」」 スバルに続き、エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエがティアナの号令に応えて駆けだす。 自分達が出撃したのは上司達の強さの見学の為ではないのだから。 「……あれ?」 身の丈ほどある槍を片手に、道端に散乱する瓦礫の山を飛び越えながら移動するエリオの目に、何かが映り込んだ。 上司二人と恐竜達が戦っている場所のすぐ近く。ビルの影で、何かが動いたような気配がしたのだ。 遠くてよく解らないが、人のようにも見える。 「……あれは。ストラーダ、生体反応スキャンは?」 『電波妨害が酷く、実行できません』 「電波妨害? なんで……?」 槍型デバイス、ストラーダの言葉に首を傾げる。 どんな状況でも一定の機能発揮できるように、全てのデバイスには電子対策が施してある。 シグナムやヴィータを見る限り、魔法を使う分には全く問題ないようだが、何故スキャンだけ出来ないのか。 そう言えば、現場に到達してから六課隊舎との通信も上手く繋がらないとヴァイスもぼやいていた。 「どうなってるんだ……?」 今朝方の定期メンテナンスでは、デバイスのどこにも異常は無かった筈だ。 どこからから妨害電波でも流されているのだろうか。 「ティアさん、スバルさん、キャロ、生体反応スキャンそちらで出来ませんか!?」 「えっ……なんでまた……?」 「向こうのビルの影で、何か動いたような気がして……ストラーダのスキャンも何故か使えないんです」 「ちょっとまって……クロスミラージュ、どう?」 『実行不可能です。妨害が酷く、スキャンできません』 ティアナの銃型デバイス、クロスミラージュの返答もストラーダと同じであった。 続いて、スバルの篭手型デバイス、リボルバーナックルとキャロのグローブ型デバイス、ケイキュリオンも同様に返答する。 「全員のデバイスが電波妨害受けてるって、いくらなんでもおかしいわよ。なんで……」 「っ!? ティア、前!」 スバルの声にハッとなり、ティアナが顔をあげるとシグナムとヴィータの攻撃をくぐり抜けてきたのか、緑色の恐竜がこちらへ突撃してきていた。 その巨体からは想像できぬ程の速度で突撃してくる恐竜を、今から避ける事は叶わない。 「くっ!」 ならば、とクロスミラージュを振り上げ魔力弾を生成、恐竜の頭部目掛けて放つ。 しかし怯ませる事すら叶わないのか、恐竜は魔力弾を物ともせず突撃してくる。 「なっ……」 「錬鉄召喚! アルケミックチェーン!」 恐竜の拳が振り上げられ、ティアナを叩き潰さんと迫るが地面に展開された魔法陣より飛び出した鎖が、恐竜の全身へ巻き付いた。 キャロの得意とする召喚魔法で呼び出された鎖が、ティアナへ迫る恐竜を絡め取ったのだ。 「ティアさん! 大丈夫ですか!?」 「っ……サンキュ、キャロ!」 「後は私がっ!」 すかさずローラーブーツ型デバイス、マッハキャリバーによる加速を得たスバルが飛び出し、右手の拳で恐竜の右足首を殴りつける。 リボルバーナックルに込めた魔力が爆発し、恐竜はバランスを崩して地響きを立てながらその場へ倒れ込む。 キャロは再度召喚した鎖で恐竜を絡め取り、完全に地面へ抑え込む形で動きを封じた。 「よしっ!」 恐竜の足元をくぐり抜け、ティアナの傍まで戻ったスバルがキャロへと拳を突き出し、キャロも満足げに頷いて返す。 それを少し微妙な表情で見やるティアナは、顔を左右に振ってから二人へ声を掛ける。 「……ほら、ぐずぐずしないで次! 副隊長達の支援行くわよ!」 「おう!」 「「はい!」」 「どうにかなりそうやな……とりあえずは」 司令室のモニターで戦闘を見やっていたはやては、ふぅと息を吐きながら呟いた。 廃棄都市区画のど真ん中に開いた穴と、そこから出現した恐竜の群れ……最初はどうしたものかと思ったが、それは杞憂に終わってくれそうだ。 シグナムとヴィータの二人でどうにか無力化できそうではあるし、フォワードの四人でも連携すればどうとでも出来る事は先程証明された。 「このまま順調にいけば、あと数分ほどで終わりそうですね」 「せなやぁ……順調にいって欲しいけども」 何事にも油断は禁物、とばかりに少々緩んでいた気を引き締め直す。 後詰として、別任務中だったなのはとフェイトもあと数分前後で現場に到着するし、余程の事は無い限りは大丈夫という確信はある。 それでも、相手が未知の存在であるのだから油断はできないと自分自身へ言い聞かせる。 各員にもそれを言い聞かせるか、と軽く咳払いをした直後……司令室のドアが開いた。 「ん?」 「あれ……部屋、間違えたか?」 「みたいだねぇ、兄貴」 「な……何、してんねん?」 ドアの向こうから姿を現したのは、大とアグモンだった。 「いや、部屋戻るついでにこの中色々見て回ろうかなぁと思ってたら、道間違えちまってよぉ」 「……そ、そうかぁ」 完全にペースを乱された、これで二度目だ。 「と、とにかく……ここは関係者以外立ち入り禁止やし、今はちょっと忙しいから」 「あぁ、悪い悪い。すぐ出てくって……行くぞアグモン」 「……なぁ、兄貴、あれ……もしかして」 「あぁん?」 司令室奥のモニターをじっと見やるアグモンが指をさし、大もその先へと目をやる。 そこに映っているのは六課の前線メンバーと、恐竜達の戦いの映像。 映像に映る恐竜達と、地面に開いた穴を確認すると共に、大の顔色は一瞬にして変化した。 「なっ!?」 そこにある筈も無い、いる筈の無い物を見ているかのような表情を浮かべて、はやてへと詰め寄る。 「おい! なんでデジモンがあそこにいんだよ!?」 「へっ? デジモンて……えぇっ?」 デジモンと言われて、はやてが見るのはアグモンの姿。 確か、昨日聞いた話ではアグモンもデジモンという種族であるらしいが、今シグナム達が戦っているのもそれだと言うのか。 同じ種族にしては、見た目も大きさも全く違いすぎて、すぐには理解できない。 「おまけにゲートまで開いてんじゃねぇか! どうなってんだよ!?」 「ちょ、ちょっと君! 落ち着け!」 慌ててグリフィスが大を抑え、はやては少し息を吐いて大とモニターの映像を交互に見やる。 大の言う通りなら、あの恐竜達もアグモンと同じくデジモンであり、あの穴はゲートという代物らしい。 昨日聞いた話に出てきた、大の世界とデジモンの世界と繋ぐ扉のような物らしいが、それがこのミッドチルダに開いてしまったとでも言うのか。 「どうなってるんか、は私達の方が聞きたいんやけども……今は、あそこに出てきてる……デジモンをどうにかするんが先や」 「どうにかするって……倒せんのかよ?」 「倒す必要は無いやろ? とりあえず動きを止めて、あのゲートって処から送り返せるんなら……」 「これは……八神部隊長!」 はやての言葉を遮り、アルトが叫ぶ。 「廃棄都市区画の歪み……あの穴から、エネルギー反応を確認しました!」 「反応?」 「はい! これは……何かが、何かとても大きなエネルギーを持ったものが、穴から出てこようとしてる!?」 悲鳴のようなアルトの報告の直後、モニターの向こうに確認できる穴……ゲートより、その巨大な何かが這い出そうとしていた。 まず、それは地響きのような唸り声と共に現れた。 恐竜たちは動きを止め、シグナムとヴィータも何かの気配を感じ取り、穴へと視線をやる。 キャロの連れている小さき龍、フリードリヒはその何かをより明確に感じ取ったのか、興奮したかのように低く唸っている。 「これは……シグナム」 「あぁ……何かが、来る」 そうして、地面に開いた異界の穴よりそれは姿を現した。 それはオレンジ色の岩のようなゴツゴツした皮膚を持ち、背中より無数の刃を生やした巨大な首の長い、巨大な竜だった。 緑色の瞳は凶暴さ、獰猛さに知性すら感じさせる。黒と緑の恐竜達よりも遥かに大型な体躯を穴より這い出させて、それは吠えた。 「ウゥォオオオオオオオオオオオオオオ!」 怒りに満ちた咆哮をあげて、巨大な竜はミッドの地へ足を踏みしめる。 「愚かなる人間どもがああああああ!」 長い尻尾を振り上げて、人間の言葉を喋りながら廃棄都市のビルを瓦礫へと変えて竜は吠える。 対峙するシグナムとヴィータは冷や汗をかきながら、それぞれの武器を構える。 人語を喋った事も驚きだが、それ以上に二人が注意するのはこの竜の放つ殺気と威圧感だ。 少なくとも、さっきまで戦っていた黒い恐竜と緑の恐竜などとは比べ物にならないのは、火を見るよりも明らかだ。 「チッ……また面倒な事になりそうだな」 愚痴りながらもアイゼンを構え、ヴィータは竜を真っ直ぐに睨みつける。 これ程の殺気と威圧感を感じたのは何時以来だろうか。 遠い昔に覚えのある、戦争の空気で感じた時以来かもしれない。 少なくとも、手を抜ける相手では無い。ましてや、後方にいるスバル達には間違っても対峙させてはならない相手だ。 (コイツは……マジで強い) シグナムともども、全身に竜の殺気を受けながらヴィータは確信する。 油断すれば、自分達でも危うい相手だと。 前へ 目次 次へ
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仮面ライダーリリカル電王sts第四話「蒼き仮面の戦士」 Uエリオに詰め寄ったMスバル。何故、二人共こんな事になってしまったのか謎は今解ける。 「僕も、先輩と同じで良太郎を探しに来たのさ。で、気付いたらこうなってたんだ。 どうやら、厄介なことになっちゃったみたいだね。」 「どういうことだ。答えやがれ。」 「つまり、僕らは一度こうなっちゃうと戻らないみたいだね。」 「嘘だろ。本当かよ。」 つきつけられる現実に声を失う、Mスバル。 「ま、なっちゃったんだから、気楽にいこうよ。」 Uエリオは、全く動じてないふうに言った。「これはこれで楽しいしね。」 「ウ~ラ~タ~ロ~ス~、あんたねぇ殴られたいの。」 「ハイ、ハイッ気をつけます。」 その頃、はやては部隊長室で悩んでいた。 (ガジェットにイマジンこれも全部あの予言に関係するんやろか。それに、良太郎君達のこともあるしなぁ。)「ホンマ、何が起こってるんや。アカンアカン今はそれどころやない。仕事、仕事。」 町中で一人の女の目の前に砂の人影があった。 「わかった。電王を殺ればいいんだな。」 「はぁいそうで~す。そうすればどんな時間にも連れてってあげま~す。」 「ふん、何故こんな奴の言いなりにならないんだ。こんな、人間の。」 「黙って言うこと、聞きやがれ。じゃねぇと喰い殺すぞ。」 「わ、分かった。」 「それでいいんだ。それでな。」 イマジンがさったあと女は、呟いた。 「これで上手くいく。全てがな!」 良太郎はスバル、エリオと話していた。 「二人共、ごめん。僕のせいでいろいろ巻き込んで。」 「いいよ。元々、私達があなたを助けたんだから。」 「僕も、そんなことないです。」 「まっ、俺は戦えればいいしな。」 「僕も、別に不自由はしないしね。」 「でも、あんまりやり過ぎるとハナさんが怒るよ。」 「オイッ良太郎!近くにイマジンの気配がするぜ。」 「え、どこにい「探す必要はないここにいる。」 突然、銃撃をされたと同時に声が響き渡る。「今日こそ、死んでもらおう電王!」 「いくよ、モモタロス!」 「おう!」 モモタロスが答えるとスバルの身体を通じて憑こうとする。 「させん!」 「うおっ、オイッテメェ卑怯だぞ。降りて来やがれ。」 「ふっ戦いに卑怯もくそもない…ヌオォォ!」 「三人共、大丈夫!」突如、桜色の閃光がはしったかと思うと上空でなのはが話しかけてきた。 「不意打ちなんてお前らも卑怯だろ。」 そのイマジン、クラーケンイマジンはそう叫んだ。 「こうなれば。」 「うわっ。」 触手(というかイカのゲソ)良太郎に絡みつかせ、水の中に引きずりこんだのだ。 「良太郎、くそあの野郎。」 「早く助けなきゃ。」「すまねぇ。俺は泳げないんだ。」 「えぇ!」 Mスバルはモモタロスの力を使ってる為に泳げないのである。 「僕がいくよ。」 Uエリオはそういうと水に飛びこんだ。そして、ストラーダのブースターで加速すると触手を全て切り裂いた。 「仕方ないなぁ。でも一度釣り上げた獲物は逃がさない主義だからね。」 そういうと良太郎に憑いて、エリオと共に陸にあがった。 そしてベルトを巻き青いスイッチを押しライダーパスを構え、 「変身。」 そう言ってライダーパスをベルトにセタッチさせた。すると、「rodform」という音声が鳴り、身体を黒いスーツが包みそれに青いオーラアーマーがセットされ、青いデンカメンが装着され一回転してこう言った。 「お前、僕に釣られてみる?」 「ふ、ふざけるな。」そういうとクラーケンイマジンは銃を乱射した。 「全くせっかちだなぁ。」 そういいながら全てかわすと、デンガッシャーを組み立てロッドモードにし、連続で突き更には蹴りを絡め攻撃した。(まずいこのままでは)クラーケンイマジンはまたも水中に逃げ込んだ。 「逃がさないよ。なのはちゃん、あの場所をさっきので撃ってくれる?」 「えぇ。」 そういうとなのはに指示した場所の横を指差しながら大声で 「危ない、そのままいくと直撃だよ。」 と言った。 「何!クッ。」 急ブレーキで止まり 顔を出すと、 「ディバィーンバスタァー」 「う、ウギャアァァ」なのはの砲撃が直撃した。 「さて、決めますか。」 そう言ってライダーパスをベルトにセタッチする。 「fullcharge」 音声と共に青いフリーエネルギーがデンガッシャーにチャージされ「う、ウゥゥ。」 陸に上がってきたその瞬間に突き刺した。そうすると、亀甲状に網が絡まる。 「ハアァッ」 そして、電王がそこに飛び蹴りを放つとクラーケンイマジンは爆発した。しかし、その瞬間イマジンのイメージが暴走した姿巨大な姿〔ギガンデス〕ハデス、ヘブン、ヘルが飛び出したのだった。 「ふぅ、いくよ。」 そこに変身待機音と同じ音がしたかと思うとデンライナーが現れた。 「ハッ」 デンライナーに飛び乗るとデンライナーを、バトルモードに移行させた。そして、3隊のギガンデスをレールで囲み半時計回りで動きながらゴウカノン、ドギーランチャー、モンキーボマー、バーディミサイルを放つ。 それと同時にサイドアックスからエネルギーの刃が飛び、レドームの刃で切り裂くと3体のギガンデスは爆発したのであった。 電王を刺客に狙わせる黒幕の正体。そして、まだみぬ仲間達。戦いは、激化していく。ばかりだった。 次回予告 Mスバル「厄介なことばっかりだな。そういえばクマはどうした。」 Uエリオ「僕らと同じで探しに来たハズなんだけど。まさか、僕らと同じでもう誰かに憑いたんじゃ。」 フェ「エリオ。早く元に戻ってね。」 なのは「フェイトちゃん泣かないで。」 キャロ「うん?泣く?」 Kキャロ「泣けるで!次回、仮面ライダーリリカル電王sts第五話「泣きっ面にクマ」や。」 ハナ「お楽しみに~。」 フェ「キャロまで。ウワァーン。」(明後日の方向に全力疾走で走り去る。) なのは「フェイトちゃーん。カムバーック!」 戻る 目次へ 次へ
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魔法少女ニニンがなのは伝 「音速丸襲来!!」 魔法の使えるごくごく普通の小学3年生、高町なのは彼女はある日親友であるフェイトにこんな事を言った。 「ねえフェイトちゃん。召喚魔法ってした事ある?」 「召喚魔法? 知ってはいるけどしたことないな。でもどうしてそんな事を?」 「ユーノ君が知ってるって言うから、ちょっと試してみようと思ったんだけど。フェイトちゃんも一緒に手伝ってくれない?」 「面白そうだね、良いよ。でも何を召喚するの?」 「えへへー実はフェニックスを召喚してみようと思ってるんだ」 そんなこんなでなのははユーノとフェイトの助けを借りアースラで召喚魔法を行い高位の召喚獣の召喚を試みる事となった。 「リリカル、マジカル、フェニックス召喚!」 なのはとフェイトが魔力を注ぎ、円形の魔法陣に魔力が溢れ爆音と共に煙が立ちこめた。 「あれ…もしかして失敗?」 フェニックスが召喚できればそれは相当な大きさの筈なのだが立ち込める煙にはそんな影はない、代わりに妙に味のある濃い~声が響いた。 「呼ばれて飛び出てアンポンタン!! ハッスルハッスル音速丸ううううう!!!!(若本)」 「音速丸さん、あんまり叫ばないで下さいよ。音速丸さんの声でまた空間が歪んだじゃないですか」 「そうですよ音速丸さん、今アニメが良いところなんですから…あれ? なんで我々こんな所に?」 煙の中から現れたのは羽のある丸っこい黄色い物体と忍者みたいな格好の人だった。 「これは一体?…」 「この人達が召喚獣?…」 突然、丸っこい物体と忍者が現れて呆然とするなのはとフェイト。 「音速丸さん! 突然見知らぬ所に来たと思ったらツインテールの美少女が目の前に!!」 「しかも二人ともステッキらしき物を持っている様子…これはもしや魔法少女的な何かでは!?」 「落ち着けお前ら~。ここで慌てれば確実に死亡フラグ確定!! 俺がまずファーストコンタクトを試みるずらああああ!!!!(若本)」 音速丸と呼ばれた丸っこいのはフヨフヨとなのは達の所に飛んで来た。 「きゅ~んきゅ♪ きゅ~んきゅ♪(若本)」 「きゃっ この子人懐っこいよフェイトちゃん」 「それに意外と可愛いね、なのは」 音速丸は鳴き声(?)を上げながらなのはとフェイトに近づき擦り寄って顔を舐めたりしだした。 「音速丸さんがカワイイ系の動物キャラのマネして美少女にセクハラしてるぞ!!」 「ズルイっすよ音速丸さん! 俺たちにもおすそ分けしてください~」 「黙れ~い!! このクルピラ野郎共が~!! 美少女と美女は俺のモノとハムラビ法典に書いてあんだよ~~!!(若本)」 なのはとフェイトにくっつく音速丸に不満の声を上げる忍者達、その忍者達に音速丸は本性を曝け出して吼えた。 「うわっ! なんかベリーメロンっぽい声だよフェイトちゃん」 「私はどっちかって言うとアナゴ的なものを感じるな」 そして落ち着いた所で音速丸たちの自己紹介が始まった。 「初めましてお嬢さんがた~俺の名は音速丸、第108銀河大統領にして、今年度抱かれたい男ナンバー1だ。ぶるううあああああ!!!!(若本)」 「ホントですか!?」 「なのは大統領ってなにか特別なおもてなしした方が良いのかな?」 「なのはちゃんフェイトちゃんそれ嘘だから。音速丸さん純真な子供に嘘を言って混乱させないで下さい。ところで僕の名前はサスケって…」 「あ~、こいつらは忍者その1、2、3でいいからよ(若本)」 「ひどいっすよ音速丸さん! 他の奴はともかく俺は名前があるんですよ!」 「サスケさん! 声がキング・オブ・ハートだからって調子に乗ってるんじゃないですか!?」 「五月蝿いぞ雑種!」 「うわ! 逆ギレのうえ王様モード(by fate/stay night)だよ」 ヒートアップする音速丸と忍者3人になのはとフェイトは苦笑いするしかなかった、そんな所にはやて達、八神家一行がやって来て音速丸のハチャメチャのギアを上げた。 「うわっ! なんやこのハチャメチャな空気は…っていうか何で忍者さんがこんな所におるん?」 「ピコピコピーン! おっぱいレーダーに反応ありいいい!!(若本)」 音速丸はそう叫ぶと八神家一…いやアースラ一の巨乳であるシグナムに(その胸に)飛び込んだ。 「うわっ! なんだこの丸っこいのは!?」 「おっぱ~い! おっぱ~い! おっぱあああああい!!!!(若本)」 「ひゃっ! 服の中に潜り込むな!」 音速丸は“おっぱい”と連呼しながらシグナムの服の中に入ろうとその丸いボディで暴れまわる。 「音速丸さんずるいっすよ~!」 「そうです俺たちにもおっぱい分けてください!」 「馬鹿野郎がああああ!! この世のおっぱいは全て俺のものだってこの前国会で決まったろうが!! ぶるううああああ!!(若本)」 「なんかこの丸っこい子、セルみたいな声やな」 「あたしはブリタニア皇帝だと思うな」 「私はメカ沢さんの声に聞こえますよ、はやてちゃん」 シグナムにセクハラを続ける音速丸に八神家の皆は音速丸を見て各々に感想を言った、そして音速丸のセクハラはレヴァンティンの一撃で終わる事となった。 続かない。 目次へ 次へ
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ゼロ因子適合者(ドライバー)その1 「EC感染者の完成形」とも呼ばれる、特殊な病化形態発動者。 ECウィルスに含まれる「ゼロ因子(ファクター)」は、通常休眠状態のままで起動しないか、あるいは排出されてしまうが、 適合体質をもつ者のみがゼロ因子の起動を行なうことが可能になる。 この「ゼロ」の起動により、使用者自身は通常のEC感染者をはるかに上回る肉体強化と、生体魔導融合による物理エネルギー生成能力をもつことになる。 ゼロ因子適合者(ドライバー)その2 ただしその強大な力の代償として、使用者は通常の視覚・聴覚・触覚(痛覚を含む)といった五感を失い、 ディバイダーあるいはリアクターによる索敵能力・危機感知能力に頼った行動をとるようになる。 トーマの場合は銀十字の書がトーマの感覚認識を代替し、危機感知によって攻撃・防御行動を自動的に行なっている。 感染 ECウィルスの感染は、通常はリアクターの接触によってなされている。 (なお、「人間型」を取るリアクターは、現在確認されているものでは「シュトロゼック」シリーズのみで、通常は無機物である) リリィとの接触によってECウィルスに感染した人々が死亡したのは、ECウィルスが起こす肉体の強制強化に耐え切れなかったため。 CWコネクト カレドヴルフ(CW)社製の武装端末に装備された通信技術。 CW社の特許技術によって、強度の魔力・電波遮断状況下でも通信可能。独自の暗号化技術により、傍受による解析も困難になるよう設定されている。 CW社が「管理局の通信機材」という膨大なシェアをもつ市場への食い込みを狙って立案・設計された、最新式の通信システムである。 Record11初出 特別救助チーム(レスキューチーム) 管理局で、災害対策を主に行なう「防災担当」。 その中で災害現場での救助活動を行なう、防災担当の選抜隊である。 特別救助隊メンバーに支給される「銀制服」【シルバー】(実際にはホワイトグレーだが、正式名称として「シルバー」が採用されている)は、 防災担当を志す局員たちにとってはあこがれの対象である。 レイジングハート・エクセリオン 単独飛行形態 ストライクカノンと「フォートレス」装備によって両手が完全にふさがってしまうなのはのため、 レイジングハート自身が申請してなしとげられた形態。 第五世代端末のシステムを一部組み込んでおり、魔力阻害状況下でも(若干のパフォーマンス低下は否めないものの)活動が可能となっている。 Silver Sters“Hundred million” トーマと銀十字の書、ディバイダー996による広域殲滅射撃。 圧倒的なエネルギー量は、銀十字の書に蓄積されたエネルギーとトーマ自身の生命力によって生み出されている。 ディバイダー996は砲身としてエネルギー生成の反動を吸収し、強大なエネルギー放出によってトーマの体を破損させない働きをしている。 ディバイダー718 リアクテッド グリップ下部に巨大銃器が生成され、実弾兵器の射撃が可能となる独特なリアクト形態。 左右のディバイダーはそれぞれ独立しており、別々の兵器をセットすることも、同時に同じ兵器を使用することも可能。 さまざまな兵器をセットできるが、多連装ロケットランチャーとガトリングガンが、アルが好んで使う組み合わせ。 Record12初出 AEC-00X「フォートレス」 CW社製の、航空魔導師用総合支援ユニット。 魔力非結合状況化での飛行制御・火砲制御を行なうメインユニットと、3機の「多目的盾」で構成される武装で、 それぞれの盾は「砲撃用の大型粒子砲」「中距離戦用プラズマ砲」「近接近用実体剣」を内蔵している。 いずれの盾も独立飛行が可能で、腕部に装着して使用することもできる。 パフュームグラブ アイシス自作の「コンバットギア」。 手首の先に装備されたバルーンから、粉塵や気化液を放出するための装備。 バルーン内には複数の「ボトル」をセットすることが可能で、複数の原料をバルーン内部で調合して、任意の効果を発生させることができる。 短距離瞬間移動(ショートジャンプ) 「瞬間移動」に該当する魔導技術自体はさほど珍しくない。 ただし、それらの術式は「移動開始/出現」には、通常「フェイズタイム」と呼ばれる、他の行動を取ることのできない時間が存在する。 「短距離瞬間移動者」は、鍛錬や術式調整によってフェイズタイムを「戦闘に使えるレベル」にまで短縮した者を指す。 特務六課部隊長・八神はやて二佐 管理局の魔導騎士であり、莫大な魔力とベルカ・ミッドハイブリットの魔導を使いこなす、通称「歩くロストロギア」。 独特すぎる魔法発動システムの弊害でAEC装備との相性が悪く、現時点では専用装備が準備されていないが、 蒐集行使型ストレージ「夜天の書」には、「魔導殺し」への対策が準備されているとのこと。 Record13初出 バルディッシュアサルト・ライオットブレードⅡ 「第五世代デバイス」の運用理論および素材技術における実験稼働機。 「魔力無効」状況における活動を行なえるよう、CW社系とは異なる変換技術を採用し、術者の魔力を機体内に蓄積、 変換して活動するシステムを搭載している。「二刀」「大剣」に加えて、「連結二刀」の形態も用意された。 ディバイダー695ランゲ・リアクテッド 巨大戦斧の姿をとるディバイダー。ディバイダー695は、アルの718と同じくリアクター内蔵型のため、 ディバイダーによる血液認証でリアクトが可能となっている。全身を覆う鎧化装甲とドゥビル自身の病化特性「高速再生」によって、 接近戦では不落の戦力となる。 ヘイムダル 八神はやてによる氷結魔法と、氷塊を利用した重量攻撃。 管理局法における魔導運用の可否に照らし合わせれば「極めて黒に近いグレー」に該当する魔法のため、 使用には「必要となる状況」の確認と複数の認可が必要となる。 再氷結および「ファランクスシフト」の使用時には、自己強化術式「ブラスターシステム」を使用し、魔力倍加をかけている。 カレン・フッケバイン フッケバインの首領。年齢不詳・素性不明の存在。 管理局が彼女の存在を認識したのは「フッケバイン一家」の活動開始後であり、それ以前のデータは存在していない。 事件発生時のデータからは、彼女も強度のEC感染者であり、ディバイダー・リアクターの保有者であるらしいということは確認されている。 Record 14 初出 マッハキャリバーAX スバル・ナカジマ防災士長の愛機「マッハキャリバー」は、前所属である遺失物管理部機動六課時代に支給された専用機であり、 移動支援魔法「ウィングロード」と格闘戦技「シューティングアーツ」を最大限に生かすために開発された機体でもある。 特務六課配属にあたり、後述のAEC07Xとの連携も含めて機体設計の見直しがなされ、大幅改良が行なわれた。 CW-AEC07X「ソードブレイカー」 他のCW社製AEC装備とは設計思想も機体構造も大きく異なる、独自の「防護装備」。 防刀・対衝撃機能をもつ外皮(アウタースキン)の中に、使用者の力を補助・増強するパワーサポート機能を内蔵している。 スバルの個人技能「震動破砕」を対鋼破砕用にチューニングして出力することで、対象の武器を破壊する機能ももつ。 銀十字の書 使用者の「武装端末及び独立管制ユニット」として機能する銀十字の書。 その行動思想はただひとつ、「自身と使用者にとっての危険を排除する」ことである。 使用者が危険にさらされれば、いかなる手段を用いても使用者を守る。 シュトロゼック 反応触媒(リアクター)・シュトロゼック4thとして生まれたリリィ。 誓約者と「銀十字」を救う方法は、彼女だけが知っている。
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リリカル遊戯王GX 第二話 魔法とデュエルと謎の敵なの! 「保健室が無事なのは不幸中の幸いだったわね」 保険医である鮎川は十代の体に聴診器を当てながら呟いた。 十代とオブライエン以外のメンバーは生徒たちを体育館へ集めている、 二人はこの異世界に飛ばされる前に酷く消耗していた。 デス・デュエル――デュエルをするたびに、身に付けさせられたデスリングにその闘気を吸い取られてしまう恐ろしいデュエル、 十代はそんなデュエルを何度も繰り返すはめになっていたのだ。 最後にデュエルをした時、この世界に飛ばされる直前の事を十代は思い出す。 「あのオレンジの人影……あいつが何かをしたんだとは思うけど……」 「考えるのは後よ。それにしても、困ったわね」 「鮎川先生?」 「保健室のベッド、2つしかないのよ」 すでにここのベッドには先客がいた。 一人はオブライエン、崩落する瓦礫から身を呈して十代を助けた時の怪我で今は寝込んでいる、 そしてもう一人は万丈目 準、黒いコートを着た彼もまた、デス・デュエルの犠牲者の一人だ。 鮎川が悩んでいると、万丈目は突然目覚めてベッドから降りる。 「俺はもういい、貴様が眠れ」 「万丈目、大丈夫なのか?」 「サンダー、貴様のような腑抜けと一緒にするな。……ん!?」 万丈目は自分が寝ていたベッドに目を向け声を上げる。 そこにはどうにも気持ち悪い小さなモンスターが三匹存在していた。 「あら、兄貴お目覚めぇ?」 ―おじゃまイエロー― 攻撃力0 防御力1000 通常モンスター 「なんだ貴様ら! 何故実体化している!?」 「俺達に聞かれてもなぁ」 ―おじゃまグリーン― 攻撃力0 防御力1000 通常モンスター 「どう? 実体化したら俺達も結構イケてない?」 ―おじゃまブラック― 攻撃力0 防御力1000 通常モンスター 心の底から嫌そうな顔をする万丈目だったが、三匹のおじゃま達は楽しそうにその周囲を飛び回る。 はねクリボーまでそれに交ざり、万丈目はさらに驚きを深くする。 「お前の精霊まで!? いったいどういうことだ!」 「外はもっと大変な事になってるドン」 「剣山、みんなは大丈夫だったか?」 「デス・デュエルで倒れていた人も含めて、百人以上の生徒がここに飛ばされてるみたいザウルス。今頃丸藤先輩たちがみんなと話してる頃だドン」 その頃体育館ではちょっとした騒ぎになっていた。 無理もない、ここに来るまでの間に砂漠と化した外の世界を見てしまったのだ、恐怖と不安でいっぱいだろう。 「みんな、落ちついてくれ!」 「落ちつけるわけないだろ! いったい何が起こったんだよ!」 「小惑星が落ちて海が全部蒸発したとか……」 「俺はモンスターを見たぞ! 冗談じゃない、こんなとこいられるかよ!」 ヨハン達の声を聞かず、パニックになった何人かの生徒が外に向かって走り出すが、 いつの間にか出入り口にいたワニ(ジムが背負っていた奴である)によって阻まれる。 「Stop! こういう時は冷静さを欠いた者から倒れていくぞ!」 「でも、これからどうするの? 食糧とか、寝るとことか……」 小柄な少女、早乙女 レイが不安そうにヨハン達へ訪ねる。 彼女は中学一年になったばかりなのだ、デュエルでかなりの腕を持つことから高等部であるアカデミアに特別に編入されたが、 まだ13歳の少女にこの状況はかなり厳しいだろう。 ヨハン達もこの問いにはすぐに答えられなかったが、助け舟が出される。 「食糧に関しては大丈夫だよ、食糧保管庫とかは無事だったからね」 「トメさん!」 「寝床は毛布とかが用意されてるノーネ、人数分以上あるから平気なノーネ」 食堂のおばちゃんとして親しまれているトメさんと、 どこからか大量の毛布を持ってきていたクロノスの言葉に生徒たちは僅かに希望を見出す。 だが、続く会話にまたも落胆してしまった。 「トメさん、食糧はどれぐらいもちそうなんですか?」 「そうだねぇ……節約すれば、一週間はもつかね」 「一週間か……」 ヨハン達は「一週間猶予ができた」と考えるが、 他の生徒たちは「一週間しか時間がない」と考えてしまい、また騒ぎが大きくなっていく。 ヨハン達は再びこの騒ぎを止めるため動くこととなるのだった。 「……あら?」 「明日香さん? どうしたの?」 「そういえば、アモンがいないわ・・・…」 普段からほとんど使われず、こんな状況では誰一人として見向きもしない図書室に一人、アモンはいた。 明らかに人間の物ではない腕が入ったカプセルを目立たない場所に置いて、一人笑みを浮かべる。 「……ん?」 ふと外の様子を見ると、見覚えのない複数の人間がアカデミアに向かって歩いてくるのが見えた。 アモンはしばらく様子を窺い、モンスターの類ではない事を確かめると体育館へと向かう。 アモンに教えられてヨハン達はアカデミアに近づいているという者達を見に外へ出る。 大半が見慣れぬ格好をした女性だったが、意の一番にボロボロの格好の男が大きく手を振りながらこちらへ駈け出した。 「おーい! みんな、俺だー!」 「あれ、この声どこかで聞いた覚えが……」 「確か……誰だっけドン?」 「二人とも、同じ寮の人なんだから思い出してあげて……み、えっと、あれ?」 翔に剣山に明日香まで、誰も男の名前を思いだせないのを見てその男はその場に座り込んでいじけ始める。 「ふっ、いいんだ、わかってさ……どうせ半年以上いなくても誰も気にせずにいたんだ……」 「み、三沢さんしっかり!」 「きっと度忘れしちゃってるだけですって、た、多分……」 慌てて回りの女性――なのは達が男、三沢を励ます。 翔達も名前を聞いてようやく思い出したようで、「ああ、そういえば最近見なかったような……」と頷いて納得する。 「ヘイ、スモールガール、あの三沢って奴はいじめにでもあってるのか?」 「私も会ったことないから……って、その呼び方何だか嫌なんだけど」 ジムとレイが話してるのを横目に、ヨハンは三沢やなのは達に歩み寄る。 ……誤解の無いように言っておくが、遊戯王GXの主人公はヨハンではなく今保健室で寝ている十代なのであしからず。 「俺はヨハン、このデュエルアカデミアの留学生だ。あなたたちは?」 「私たちは時空管理局の魔道士です、えと、自己紹介は後々ということで、とりあえず中に入れてもらって構いませんか?」 十代やオブライエンも話を聞きたい、ということだったのと、 体育館に行ってまた無用な混乱を起こすのを避けるために、ヨハン達は保健室へと集まっていた。 さすがに全員は入れないので、剣山やジム、フリードなどのスペースを取る者は外にいる。 「えっと、その時空管理局っていうのが何なのかはわかったけど……」 なのは達から説明を受け、明日香は困ったように呟く。 確かに今までも異世界だったり、カードゲームをするだけで命を奪われかけたりと非常識な生活だったが、 真正面から堂々よ「魔法使いです」などと言われても信じにくい。 モンスターは信じたじゃないか、という声が上がりそうだが、やはり自分たちと同じ姿かどうか、というのは偏見ではあるが大きいのだ。 「皆さんは三沢さんがこの世界に飛ばされた事故とは違う理由でこの世界に飛ばされたんですよね?」 「はい、あくまで予測でしかないですが」 「そうか……帰る手段は無いんだな」 ヨハンとのやり取りを聞いていた三沢が項垂れる。 彼はシュタイン博士という量子力学の研究をしている人に憧れ、 半年以上前からずっとその研究をしていたらしい(その間誰一人としていないことに気づかなかったのは伏せてある) ある日、実験中の事故によってこの世界に飛ばされてしまいモンスター達から逃げ回っていたそうだ。 「シュタイン博士は、この世には12の次元世界があるとおっしゃっていたが……実際にはもっと無数にあるんだな」 「でも、個人レベルでそこまで見つけるなんて並大抵のレベルじゃないわ、天才なんて言葉じゃ足りないかも」 ティアナの言葉に三沢はどこか嬉しそうな表情になる、自分の憧れの人間が褒められるのはやはり嬉しいのだろう。 それまで黙っていた翔が、恐る恐るなのはへと尋ねる。 「あの……もしかして僕ら、無断で別の世界へ飛んじゃった、ってことで何か罪になったりするんですか?」 「ああ、そんなことは無いですよ、悪意があったというならともかく、皆さんは被害者ですし」 「それにこの世界はまだ管理局の管理下にありません。私たちに強制力はないですよ」 なのはとフェイトの言葉に一同胸を撫で下ろす、 やはりどこか不安だったのだろう、こんな見知らぬ世界で犯罪者扱いはごめんである。 「本局に連絡して皆さんの元の世界を探してもらいますね」 「元の世界が見つかったら、俺たち帰れるのか!?」 「よ、よかったぁ、一時はどうなる事かと……」 十代達は安堵感から一気に緊張が解けるが、 なのは達は逆に表情を強張らせる。 万丈目がそれに気づき、聞きたくないと思いつつも問いかける。 「お、おい……どうした?」 「……フェイトちゃん」 「ううん、私もダメ、エリオ達は?」 「僕たちもダメです……」 「私もです」 「本局との通信が、通じない……」 呆然と呟いたスバルに、十代たちに再び絶望感が蘇ってしまう。 「ど、どういう事だ!?」 「わ、わからない、念話をしようとするとノイズが……ジャミング?」 「みんな、少し離れて」 なのはの言葉に従い、全員が保健室から出る、 十代とオブライエンも大分回復してきたようだ。 なのはの足元に魔方陣が現れ、十代達は「おお!」と驚き――乾いた音を立てて魔方陣が砕け散る。 「な、何が起こったザウルス?」 「ダメ……転移魔法もキャンセルされる」 「そ、それじゃもしかして、私たちも帰れない……?」 「そうなる、ね……」 『んなっ……!』 なのは達の会話から、十代達は希望が断たれた事を知る。 一度期待を持たされてから叩き落とされる方が答えるものだ、翔は沈み込んでしまっているし、レイに至っては不安で顔が青くなってしまっている。 だがヨハンやアモン、オブライエンに明日香といった冷静なメンバーもショックは受けていたもののまだ思考を巡らせる余裕は残っていた。 「と、とにかく、そういうことなら俺達は同じ立場ってことだな」 「そうなるとまずいな、食糧の配分等を考えるとまた騒ぎになるかも……」 「あ、食糧なら大丈夫です」 「数日分なら持ってきていますし、その気になれば一週間ぐらいは水だけでも」 「なるほど、未知の場所へ向かうなら必須のスキルだな」 「そ、そういうものなの?」 食事の心配はしなくていい、というのは助かるが、だからといって状況が変わった訳ではない。 ゴール直前で振り出しに戻ってしまったようなものだ。 「体育館のメンバーにも人数が増えたことを伝えないとな……」 「いつモンスターが来るかわからん、単独行動は控えさせるべきだ」 「俺は全員でいるなど御免だぞ! 窮屈でかなわん!」 全員で話し合い、数人のグループ毎に行動することを決定する。 なのは達は色々試し、念話を始めとした通信手段と転移魔法のみが使えなくなっていて、他の攻撃・防御呪文などは使える事が判明した。 十代達は自力で自分の世界へ帰る方法を、なのは達は魔法を封じている存在を探すことをそれぞれの方針とする。 ――時は過ぎ、夜 「……?」 「えっと、ごめんマルタン君、ちょっと着いて来て欲しいんだけど……」 毛布に包まり寝ていた男子生徒、加納 マルタンは突然レイに起こされゆっくりと立ち上がる。 「どうしたの……?」 「や、えっとそのー……とにかく一緒に来て!」 レイは何故か頬を染めながら無理矢理どこかへ連れて行こうとする。 マルタンは首を捻りながらついて行くのだった。 「馬鹿な!?」 自らの組んだグループから密かに離れ、アモンは図書室へ来て驚愕の声を上げた。 カプセルに入っていたはずの腕がなくなっていたのだ、無論一人でに出ていくわけがない――とは言いきれなかった。 「馬鹿な、俺以外を選んだというのか……!?」 アモンは歯を食いしばり、とても十代達の前にいた時からは想像できない怒りの表情に変わっていた。 オレンジ色の人影、そうとしか形容できない「それ」は跳ぶようにアカデミアの廊下を進んでいた。 『闇……心に大きな闇を持つ者……』 突然現れた魔法使い達にもそれぞれ闇はあったが、どれも光に抑え込まれてとても憑けそうにない。 とりあえず外部との連絡手段は断ってやった、あいつらがいるだけなら構わないが「彼」まで連れていかれては困るのだ。 その影は更に進んでいき、二つの人影を発見する。 『見つけた……』 影はスピードをあげ、人影――レイとマルタンへと近づく、そして…… 「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」 レイの悲鳴が夜のアカデミアに響き渡った。 続く なのは「本局との連絡は途絶え、十代君達の元の世界の人達も手だしができない……」 十代「それでも諦めないぜ! デュエルも人生も、最後の1ターンまで分からないんだ!」 次回 リリカル遊戯王GX 第三話 飛べスバル! ペガサスに乗る魔法拳士! 十代「こ、こんなデュエルもありなのかぁ!?」 十代「今回の最強カードは、って今回はデュエルしてないんだったか」 なのは「なら、今回はこれで!」 機動六課 フィールドカード 「スターズ」「ライトニング」「ロングアーチ」の名前がつくカードの攻撃力と防御力が300ポイントアップ そのカードが破壊された場合、デッキからカードを一枚除外することで破壊を無効にする 十代「次回もよろしくな!」 なのは「ガッチャ! なんちゃって♪」 前へ 目次へ 次へ
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『仮面ライダー龍騎…城戸真司か』 「神崎士郎…お前、こんな戦いを何回繰り返すつもりだよ!」 それを言い終える頃には、神崎は映っていなかった…。 それもそのはず、真司の後ろにいたのだから。 『ほう、タイムベントの記憶があるのか。そのまま同じように繰り返すといい』 「残念だったな、もう前と違う進み方してるんだよ!」 『どういう事だ?』 「前はディスパイダーとの戦いで蓮に会った。でも今回は蓮じゃなくて手塚に会ったんだ」 言い終える前に、神崎は再び鏡に戻っていた。 「それだけじゃない。この時点では前は誰にもばれてなかったのに、今回は何人かの人にばれているんだ」 『すでに前と違う進み方をしているのか…それもいい』 「神崎士郎!俺は絶対に、ライダーの戦いを止める!誰一人死なせたりしない!」 『それがお前の願いか。いいだろう。そのために戦え…戦え!』 言い終えると、神埼が消えた。 (そうだ、誰かに死なれてたまるかよ…!) 翌日、OREジャーナル。 「火事に気付いた場合、最初にどんな行動をとるかで生存率が変わってくるという…と」 現在夜勤で火事に関する記事を書いている真っ最中。 近くにあるコーヒーメーカーもコーヒー蒸発を通り越してメーカーそのものが溶け出している。 「正確に火を消せるかは疑問だ…よし、もう一頑張りだ」 真司、気付け。コーヒーメーカーが火元になって火事になっているぞ。 「火事の恐ろしさには…お?」 やっと気付いたが時既に遅し。 「うわ!火事だよ火事!どうすんだよ!」 必死に消そうとするが、消えない。全く消えない。それどころか延焼している。 「何だよこれは!どうなってんだよ!消防車!消防車ぁ!う熱っち!熱っちい!!」 「火事だ…火事だ!」 どうやら夢だったようだ。しかも今は昼前である。 「ちょっ、何やってるの城戸君!」 「火どこ!?火、火、火!」 思い切り消火器をぶちまける。寝ぼけているようだ。 「うわ!お前何すんだ!」 「あ~!アマリリス…」 「あああああ!うああぁぁぁぁ!!」 寝ぼけて未だに消火器をぶち撒ける真司。いい加減目を覚ましてもよさそうなものだが。 「いいかげん目を覚ませこのバカ!」 大久保のヘッドロック+ブレーンバスターのコンボが決まった。城戸真司、K.O. 第六話『蛇と蟹』 その頃学校では。 「そういえばはやてちゃん、一つ聞きたいことがあるんだけど」 なのはがはやてに話を振る。 「ん?何や?」 「はやてちゃん、前から真司さんと知り合いだったみたいだけど…どんな人なの?」 「ちょっと待った。その真司って人、誰?」 昨日のやりとりを知らないアリサが聞く。 「ああ、昨日からアースラに協力してくれてるライダーの人だよ。あの人も戦いを止めたいみたい」 なぜなのはが知っているか。その答えは簡単、そのやりとりの時に艦橋にいたから。 まあ、筆者の技量不足でセリフもらえなかったが。 「ふぅん…あたしも興味あるな、その真司って人とはやての関係」 いつの間にか話題がはやてと真司との関係にすり替わっている。 はやて以外の全員が気付いているが、あえて黙っていた。その方が面白そうだからである。 「ちょ…どうしても話さなあかん?」 「ごめん、はやてちゃん。私も興味ある」 すずかまでもが「さあ話せ」といったオーラで迫る。 助けを求めるかのようにフェイトの方を向くが… 「はやて…諦めて話したほうがいいよ」 孤立無援。味方はいない。 観念したかのように話し始めるはやて。 「別に大したことやあらへん。2年くらい前やったかな?真司君がうちの近所のアパートに越してきて、それ以来仲良うしてもらってるんよ。 私から見れば、真司君は年の離れたお兄ちゃんみたいなもんやな」 気のせいか、真司のことを話すはやてが少し楽しそうに見える。 「…まあ、頼りにはならへんけどな」 最後の一言でどっと笑いが巻き起こった。 で、放課後の帰り道。先日の4人にはやてを加えた5人での帰宅途中。 「あれ?真司君。何かあったん?」 はやてが向こうから歩いてくる真司に気付き、声をかける。 「あ、はやてちゃん。いやー、アパート追い出されちゃってさ」 そう言われて改めて真司を見ると、なるほど。かなりの大荷物だ。 多分アパートからありったけの荷物を運び出したのだろう。 「それで、新しく住む所決まるまで会社に泊まらせてもらおうと思って…」 それを聞き、少し考えるはやて。何を考えているかは大体想像がつくが… 考え事が終わると、想像通りの事を言い出した。 「それやったら真司君、うちに住むってのはどうやろ?」 「え?いいの?」 「うん。真司君やったらいつでも大歓迎や」 「…それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうとするよ」 住む所が決まったことか、それとも会社に泊まらずに済んだことか。 どちらかは分からないが、真司が嬉しそうに申し出を受け入れた。 「…はやてが『頼りにならない』って言ってた理由が分かった気がする」 思い切りため息をつくフェイト。それと同時に「自分の義兄がこうだったらちょっとな…」とも思っていた。 所変わってここは拘置所。浅倉威はここで拘留されていた。 「浅倉威、弁護士と接見だ!」 看守が浅倉を呼び、面会室へと来るよう指示する。 「イライラするんだよ…こんな所にいるとな」 口に出すあたり、相当イラついているようだ。 というのもこの男、幼少から暴力に包まれて育ってきたために、今では暴力無しではすぐイライラする性格になってしまっているのだ。 そして弁護士の北岡秀一との接見、裁判の結果によりさらにイライラする事になった。 「懲役10年、まあ納得できる判決だと思うよ。 俺としてもギャラの範囲で全力は尽くしたし」 「…無罪に出来る弁護士じゃなかったのか」 「程度ってもんがあるだろ?ここまで減刑させるのもかなり強引な手を使わなきゃいけなかったし。 だいたい動機が『イライラしたから』?通用しないよそんなの」 そう言うと北岡は荷物を片付け、席を立つ。 「…浅倉さん、弁護するにも相性があるんだよね。悪いけどあんたとは合わないみたいだ。 控訴するんなら、他の弁護士雇ってよ。じゃあね」 浅倉の収監されている部屋にて。 「クソッ…イライラしやがる…」 先ほどの北岡とのやりとりもあいまって、非常にイラついているようだ。 その時、何かの違和感を感じ取る浅倉。窓から外を見るが、何も無い。 そして戻ろうとしたその時、神崎が『いた』。 ジリリリリリリリリ!! 警報のベルが鳴り響く。脱獄を伝える警報だ。 急ぎ看守や警官がその現場…浅倉のいる部屋へと向かった。 だが、そこに浅倉は見当たらない。代わりにいたのは紫の鎧と銀の仮面を着けた仮面ライダー『王蛇』だ。 「このイライラ…お前らで晴れるか…?」 『SWORDVENT』『ADVENT』 数時間後、海鳴署にて。 「何ですって?浅倉が!?」 浅倉脱獄の報を警察が聞いたのは、脱獄から数時間後だった。 というのも、その拘置所で浅倉のところへと向かった人間は皆、何者かに殺害されていたのである。 須藤雅史刑事は、脱獄と殺害両方に対しての怒りを覚えていた。殺された警官の中に彼の友人がいたとなれば尚更だ。 その憤怒の表情を見られるのが嫌だったのか、須藤は休憩室へと去っていった。 「浅倉め…!」 怒りのあまり、それを言葉に出来ていない。 その状態でようやく絞り出した言葉がそれであった。 しかし、殺しはともかく、どうやって脱獄したのかが気になっている。 神崎が彼の前に現れたのは、その時だった。 「誰ですか?いやそもそもどうやってここへ?」 『そんな事はどうでもいい。浅倉威の事で話がある』 「…何か知っているんですね?」 そして神崎は全てを話した。 ライダーの戦いのこと、自分が浅倉にカードデッキを渡したこと、その力で看守・警官皆殺しにして脱獄をしたことを。 「…じゃあ、あなたのせいで浅倉は…!!」 『今更何かを言おうとは思わん。今俺に出来るのは、お前に浅倉を倒せる力を与えることだけだ。』 そう言うと、カードデッキを取り出す。 須藤はすぐに、これが例のカードデッキだと理解した。 「何のつもりか知りませんが、これは頂いておきます。 この力で浅倉を、そしてその浅倉に力を与えたあなたを殺す。 今から覚悟しておくことですね」 『覚えておこう』 そう言うと、神崎は去っていった。 次回予告 『昨日未明、脱獄事件が発生しました』 「おい、待てよ蓮!」 「ここがミラーワールドか」 「何だ、あいつ…見たことも無いライダーだ…」 仮面ライダーリリカル龍騎 第七話『夜の騎士』 戻る 目次へ 次へ
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それは、こことは違う世界の片隅のお話。 鬱蒼とした森の中を、少しでも早く抜けようと足早に歩を進める三つの人影。 おや、よく見るとコウモリらしき小さな宙を舞う影もあるようで。 「……おい、ニジュク、サンジュ」 何と、そのコウモリは喋れる様子。 そして、呼ばれた二つの小さな影が、 「なぁに、セン?」 「どうしたの、セン?」 くるりと喋るコウモリ――センに振り向きます。 エプロンドレスを身につけた、浅黒い肌に雪の様な白い髪を持つ、くりくりと大きなエメラルド色の瞳が印象的な、可愛らしい幼い双子の女の子たちでした。 ――そうそう、猫の様な耳と尻尾も印象的でしたね、忘れてました(苦笑)。 「お前等、何時にも増して、今日は何て言うか、……足取り軽やかじゃねーか?」 訝しむ様に問いかける、セン。 「そうかな?」 黒い耳と尻尾を持つ、ショートカットのニジュクは言いました。 「そうなのかな?」 白い耳と尻尾を持つ、三つ編みを二つの輪っかにしているサンジュは言いました。 「「クロちゃ(ちゃん)は、どうおもってるの?」」 二人は、すぐ前を歩く人影に振り返って尋ねました。 それは、何とも奇妙な人影です。 まず、葬式にでも行くかの様に全身を黒ずくめにしています。 次に帽子。これまた黒くて、一見するとシルクハットのようですが、天が高くて鍔も大きく広がっていて、そのおかげで顔の殆どが隠れてしまってます。 そして、何よりも印象的なのが、その些か小さい背中に背負っている古ぼけた棺桶。只でさえ不吉な雰囲気に決定的な何かを与えてしまっているのは、間違いありません。 しかし、その人影――クロは、無表情に、そして無口に歩いています。 「「ねぇ、クロちゃ(ちゃん)ッッ!!」」 「……そうだな」 その歩みを些か遅くして、クロは振り返りました。 愁いを含んだ黒い瞳、大きな黒縁の丸眼鏡、長い黒髪とまだ大人に成りきれない顔が、帽子の影から現れました。女の子のようですね。 「確かに、昨日よりは、元気に歩いているかな。疲れ知らずって言うか」 「だろ。何つーか、こう、嬉しいことがあって、それで心ここにあらずッつーくらい、浮かれまくってるような気がするんだが……?」 少し表情を崩したクロの前で、難しげな顔で腕を組むセン。あっ、組んでるのは翼でしたか。 「そうかな?」 「そうなのかな?」 そう言ったニジュクとサンジュの顔は、しかし、まるで満開のひまわりを思わせる笑顔だったのでした。 「何か、昨日のあの町であったのかい、嬉しいことでも?」 「「ううん、ぜんぜん」」 クロは、あっさりと否定されました。 「でもね」「でもね」 ニジュクとサンジュは言います。 「なにかが、あるの」 「なにかが、おこるの」 「「なにかはわからないけど、なにかうれしいことがあるの(おこるの)」」 二人とも、とてもとても嬉しそう。 「……そうか」 そう言って、クロは歩みを少し速めます。 小さな影も、つられます。 「やれやれ。……まっ、何時もみたく「つかれたー」「おかしたべたーい」って駄々こねられるよか、ましだわな」 一言多いコウモリです。 しかし、二人は気にしません。 いつもなら文句を言う二人が、気にせず歩いています。 その様子に不気味さすら覚え始めたセンを、全く相手にしません。 (なにかが、あるの) (なにかが、おこるの) (*1) 鬱蒼とした森の中を、その不気味な雰囲気をものともしない二人の小さな胸の中で、 これから起こるであろう何か「とてもうれしいこと」への期待が、大きく大きく、ふくらんでいったのでした。 今は、六月の初頭。 日本ならばそろそろ空気が湿り気を帯びてきそうな時期だが、ここはミッドチルダの首都・クラナガン近郊のとある自然公園。 日本のものより湿り気の少ない風が、肌に心地良い。 天気は晴れ。快晴とまではいかずとも、綿飴のような白い雲がぷかぷかと空に浮かぶ様子は、却って空の瑞々しい蒼さを際だたせているように、ヴィヴィオには見える。 その傍らには、大好きなママ――高町なのはがいる。 「……ママ」 「なぁに、ヴィヴィオ?」 「そら、とっても青いね」 まだまだ小さなヴィヴィオは、なのはのすらりとしつつ大きくて温かな手を、その小さな手でぎゅっと握ってつぶやいた。 「そうだね……」 そう答えて、なのはも空を見上げる。 その蒼さは、なのはの目にはとても眩しく写った。何故かは解らなかった。 ただ。 (……こんなに穏やかな日が、迎えられるなんて、思いもしなかったな) ふと、そんなことを思う。 あのJS事件が終決し、事後処理も一通り片付き、機動六課が解散してすでに二ヶ月が経つ。 六課の仲間達も、元の職場に復帰したり、新しい道に進んだりして、それぞれ忙しい日々を過ごしていると聞く。 なのは自身も正式にヴィヴィオを養女として後、教導隊に戻って後進の育成に当たる忙しい日々。 ヴィヴィオも、本人の希望で聖王教会系の魔法学院に入学、勉強に遊びにと忙しい(……かな)日々を送っている。 だから、最近は少しヴィヴィオは寂しかった。 解っているけど、もう少しママと一緒に過ごしたい。 なのはも、そんなヴィヴィオの気持ちは解っていた。 そして、まだ幼かった頃の自分と同じ気持ちにさせたくないと思っていた。 だから、今日はピクニック。 この日のために、なのはは仕事を頑張った。 そして、二日間の確実な休みを取得した。 本当は、ユーノも来るはずだったが、急な仕事でキャンセルとなったのは、少し残念か。 でも、 (この子には、そんなの関係ないよね……) 残念なのは、なのはだけ。 いや、ヴィヴィオも少し残念であった。 が、それ以上に、 (なのはママと、一緒にいられる♪) そっちの気持ちの方が、強かった。独り占めできることが、嬉しかった。 それにしても、陽の光がこんなに眩しいのは。 (ああそうか……) 太陽が空の一番高いところに差しかかろうとしているのもあったから。つまり、なのはがもう片方の手で持っているバスケットの出番と言うこと。 なのはは、ヴィヴィオに尋ねる。 「ねぇ、おなかの虫は何て言ってる?」 「えっ、……んーと、ね」 ぐぅ……。 「……あはは」 「うん、結構歩いちゃったし、もうそろそろお昼になるし、お弁当、食べようか♪」 そう言って、バスケットを高々となのはは持ち上げた。 「ハァ~イッ。やったぁッッ!!」 バンザイして、喜びを現すヴィヴィオ。 なのはにはその笑顔が、頭上の太陽よりも眩しく輝いて見えていた。 それから、適当な木陰にシートを広げ、二人はお弁当を広げてランチタイム。 「ママ、とってもおいしいッ!」 「そう? ありがと♪ 今日はヴィヴィオのために頑張っちゃったから、ママ、とっても嬉しいな」 朝早くに起きて、なのはが愛娘のために心を込めて作ったサンドイッチは、ヴィヴィオには愛しいママの温もりが感じられる、優しい味がした。 楽しいランチタイムを終え、ヴィヴィオは木陰の側を歩き回り始める。 様々な小鳥のさえずり、頬を優しくなでる風、徐々に深みを増しつつある林の緑、少し離れた小川のせせらぎの音、 道ばたに咲いている小さな花、等々、まだ幼いヴィヴィオにとって新鮮な発見の連続。 「ねえママ、このお花始めてみたけど、とってもきれいだね」 「そうだね、ママも初めてみるけど、薄いピンクの色が可愛いね……」 道ばたで摘んだ花をなのはに持ってくるヴィヴィオ。 それをなのはに渡すと、ニコニコと笑顔を振りまきつつ、また別の場所に向かう。 そのぽてぽてと走り回る姿に、なのはは顔を綻ばせっぱなしだった。 そんななのはは、木陰のシートにランチタイム後もずっと座っている。 歩き疲れと、仕事疲れのためか、些か体が重い感じがする。どうやら、そのことをヴィヴィオも見て取ったらしく、 「ママはここで座ってて。ヴィヴィオ、ちょっとそこのお花見てくるから」 そう言われてから、ずっとぽてぽてと走り回るヴィヴィオを、樹にもたれつつ見守っている。 そして、ちょっと危なっかしい様子にハラハラしながら、でも自然とその頬笑ましさに癒されている自分に気付く。 幼い娘に気を遣わせてしまったという、ちょっとした罪悪感。 「少し、悪いことしちゃったな……」 でも、少し、嬉しい。 「ありがとう、ヴィヴィオ」 まだ元気よく走り回るヴィヴィオを眺めながら呟く。 それにしても、今日は本当に風が優しい。 初夏を過ぎて更に強くなりつつある日差しも、木々の梢を通すとかなり和らぐ様子。 そして、それはある種の誘惑への誘い。 「本当、ここの所、忙し、かっ、た、し……」 流石の『管理局のエース・オブ・エース(または(自主規制))』も、睡魔の誘惑を振り切ることは出来なかったようだ――。 森の鬱蒼とした様子は、まだまだ続くようです。 おや。 「あっ」 「あかるくなってきた」 先頭を行くニジュクとサンジュは言いました。 「ふむ、ようやく新しい村かな」 「ふえー、ヴァルキアの街から歩いて三日、……やっと着くかぁ。えーと、次、何て村だっけ?」 クロはガサガサと地図を広げました。 「……テルヌーゼン、さ。割と大きな村らしいね」 「へえ。てことは、……おい、そこの二匹、今日は特に俺等から離れ、って」 ニジュクとサンジュは走り出しました。 「言ってる側からこれかよッ! おいッ! 離れるなッつってんだろッ! てか、走るなッ、そこの二匹ッッ!!」 センの喚きも耳に入りません。 「ふふッ、やれやれ」 クロは地図をしまいつつ、肩をすくめました。 ニジュクとサンジュは、走ります。 ひたすらに、一心不乱に、ニコニコと。 森の木立から溢れ出てくる、眩しくも柔らかな光に向かって。 二人は、走ります。 「……ママ?」 また別の花を手にしてなのはの下に戻ったヴィヴィオは、樹にもたれて静かな寝息を立てている彼女を見つけた。 「ママ……」 なのはの頬を、軽くつついてみる。 「う、ン……」 反応はあったが、目を覚ます様子はない。 「……」 どうしようかとヴィヴィオは逡巡する。 その時。 「……ヴィヴィオ、あんまり、……遠く、行っちゃ、ダメ……」 なのはの寝言。それに一瞬驚いて、しかし、 「起こしちゃ、……悪いかな」 そう呟いてヴィヴィオは、なのはの傍にちょこんと座った。 (かまってくれないのは少し寂しいけど、傍にいるだけでも……) そんなヴィヴィオの目の前を、不意に横切った柔らかな光の塊。 「えっ、……何?」 手の届かない距離まで離れたそれは、金色の光を出している、一匹の蝶だった。 「きれい……」 思わず見惚れるヴィヴィオ。 その蝶も、ヴィヴィオのことをどうやら見つめている様子。 しかし、不意に踵を返してまた離れ出す。 「あっ、……待ってッ!」 思わずヴィヴィオも、つられるように後を追いだした。 公園内の林の中を、光り輝く蝶が飛ぶ。 それを追って、ヴィヴィオは走る。 ひらひらと蝶は飛ぶ。 しかし、ヴィヴィオは追いつけない。 手を伸ばす。 しかし、もう少しの所で届かない。 何かがおかしい。 その蝶はただ、ひらひらと飛んでいるだけなのに。 でも、届かない。 (何で……) ヴィヴィオは、思う。 (あのちょうちょを追いかけてるのかな……) 追いかけながら、思う。 (どうして、追いかけてるのかな……) 息を切らせつつ、思う。 (何で……) 一心不乱に、走りながら。 (どうして……) ただただ、蝶を追いかける。 「……あっ」 そして。 「もしかして……」 ふと、気付いた。 「あのちょうちょに、呼ばれたの、かな……」 そう呟いた刹那。 「――んっ」 視界が開け、それまで林の木々で遮られていた陽の光が、一気に、大量に円らな目になだれ込み、ヴィヴィオは思わず目を細めた。 そして、すぐに慣れ始め、徐々に目を開けてみた。 そこは、一面、色とりどりの野草の花が咲き誇っていた。 草原だった。 辺りを見渡す。 かなり開けている。視界を遮るものは乏しい。 距離にして三百メートルくらいか、左手前方に小高い丘があって、その上で人が二人、立っているのが見える。 一人は、何かを投げているようだった。そしてそれは、その人に戻ってきた。ブーメラン……か。 「――あっ、ちょうちょ、は……」 不意にあの蝶のことを思い出し、きょろきょろと辺りを見回した。 「いたッ!」 すぐに見つかった。最も、光っているのだから見つからぬはずもないだろうが。 件の蝶は、少し離れた、ちょっと他のより少し茎を伸ばした花の上で、そのストローのような口をのばして蜜を吸っていた。 そっと近づいてみる。 蜜を吸うことに夢中なのか、逃げる素振りを見せない。 更に近づく。 逃げようとしない。 いよいよすぐ傍まで来て、顔を近づけてみた。 全く、逃げなかった。 「……よし」 意を決し、ヴィヴィオは手を伸ばした。 (ママに見せたら、喜んでくれるかな) そんなことを思いながら。 そして、そっと蝶を摘んだ、その時。 ニジュクとサンジュは走ります。 光を目指して、走ります。 そして。 「「とおちゃ~~~~~くぅっっ!!」」 そう叫んで、森を抜けようとした、その時でした。 「えっ……ッ!」 蝶はヴィヴィオの指先で光を急に増し、 そして、光のボールとなり、爆弾が爆発するように、弾けた。 光が、二人を包み込みました。 「えっ?」 「あれっ?」 そして、勢いよく、弾けたのです。 そして。 そして。 物語は動き出す。 二つの世界が、交わります。 さて、物語の行方は、如何なる物か。 しかし、それも旅人たちには、思い出の一つに過ぎなくなるのでしょう。 『棺担ぎのクロ。リリカル旅話』 OVERTURE・了。 目次へ 次へ
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魔王少女リリカルなのはPARANOIA 全てをなのはさんに管理された管理局六課を舞台にしたRPG。 全てを完全ななのはさんによって完全に管理された完全な世界で、完全な局員は完全に幸福に暮らしている。 但し、なのはさんは狂っている。 完全なこの世界では局員は常に幸福であり、逆説的に幸福でない局員は完全ではない。完全なるなのはさんは完全ではないものを排除し六課を完全に保つ。即ち、なのはさんが完全でないと判断したものはその場で消される。 完全なるなのはさんは常に正しい。なのはさんの答えに疑問を挟むものは秩序を乱すものとして処刑される。 局員にはInfraRed(名無し)からUltraVioret(大切なお友達)までのクリアランスが設定されている。それぞれに権限があり、越権行為は反逆の証拠として処分対象である。例えば、なのはさんが体重計に乗った時の情報はUV権限がなければ知ることができない。 あなたは反逆分子を処分する「ナンバーズ」である。ここでいう反逆分子とはなのはさんを侮辱し秩序を乱そうとするもの、そして秘密組織(なのはさんによって認められていない存在は反逆である)、ミュータント(遺伝子的な男は処分対象)を言う。 ところであなたは(誰にも秘密だが)実はミュータントで、なおかつ秘密組織の一員である。 あなたは誰にも正体を知られずに任務を遂行しなければならない。もし知られた場合は Zap!Zap!Zap! 次のクローンはきっとうまくやってくれることでしょう。 単発総合目次へ その他系目次へ TOPページへ
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「あの二人が、ああも簡単に……」 「負けた……」 訓練室を見下ろすように設置された隣室にて、模擬戦の一部始終を見ていた三人。 その内の二人、ユーノとアルフは茫然とした面持ちで言葉を吐き、眼下のヴァッシュを見つめていた。 「何だ、君たちは前回の戦闘映像を見てなかったのか?」 「いや、見たけど……此処まで圧倒的とは流石に……」 「幾らなんでもアソコまで強いなんて思わないだろ。普段がああなんだしさあ」 「今見たとおり、コレが彼の実力だよ。君たちの言いたい事も分からなくはないがな」 その模擬戦は時間にすれば五分にも満たない極短時間のものであった。 だが、その五分の間に見せ付けられるは信じられない出来事の数々。 魔導師でもない人間が魔力を活用しての高速移動に反応し、砲撃魔法や誘導型射撃魔法をも回避し、二人のエースを完封するその光景。 二人の実力を知るユーノとアルフだからこそ、その驚愕は更に大きなものとなる。 「……クロノ、もし君が彼と戦ったとして、勝てると思うかい?」 ユーノの口から零れた言葉は、無意識の内に沸いて出た疑問であった。 百年をも越える年月の間、様々な次元世界を統括してきた時元管理局。その長い歴史に於いて、最年少で執務管となった天才魔導師。 この天才魔導師と二人のエース魔導師を圧倒した男とが戦闘を行ったとして、どちらが勝利するのか。 思わず好奇心からユーノは口を開いていた。 その問い掛けにはアルフも興味があるのか、ピクンと耳を揺らして、クロノへと視線を移す。 ユーノとアルフ、二人の好奇心に満ちた視線を受けて、最年少執務管はにべもなく言い切る。 「まぁ十中八九、僕が勝つだろうな」 さも当然のように、なのはとフェイトを容易く打ち倒したガンマンに対して、勝利できると。 「な、何でそんな自信満々に言い切れるんだよ」 「別に僕だけの話じゃない。なのはにも、フェイトにも、アルフにも、君にだって、勝機は充分にあるさ。ただ今の模擬戦はなのは達が戦い方を間違っただけだ」 「間違ったってどういう事さ」 「単純な話だ、ヴァッシュには大きな弱点がある。それは―――」 と、不審気な表情を浮かべるユーノとアルフに対して、クロノが言葉を続けようとしたその瞬間であった。 「―――バインドね」 その一言と共に訓練観戦室の扉が開いた。 会話を中断させ、一斉に振り返るクロノ達。 視界に飛び込んでくるは、執務官権限で出入り禁止にした筈の部屋に笑顔で入室してくる、二人の女性の姿。 黒耳に黒色の尻尾、身体のラインに張り付くような黒を基調とした服。 その二人は服装から姿恰好まで、まるで鏡に映したのかのように、非常に似通っていた。 唯一の相違点といえばその髪型くらいか。片方は肩甲骨に届く程の長髪、もう片方は肩までの短髪である。 「アリアにロッテ? 何で君達が此処に!」 その二人を見てクロノの鉄仮面が易々と砕け散った。 驚愕をありありと表に出しながら、唐突な入室者へと近付き声を上げる。 事態について行けないユーノとアルフは困惑を浮かび上がらせて、クロノと入室者へと視線を交互に行き来させていた。 「よっ、お久しぶりぶり~、クロスケ」 「こそこそと何かしているのを見かけてね、ちょっと付けさせて貰ったわ」 予想外の来客に慌てふためいているクロノとは対照的に、落ち着き払った様子で笑顔を見せる二人の女性。 その猫のような耳や尾を見て、アルフとユーノは女性達が使い魔である事に気が付く。 「つ、付けさせて貰ったって……」 「ちなみに全部見ちゃったから。質量兵器を使ってる所も、それを止めもせずに見てるクロノも」 長髪の方、クロノから見て右側に立っている女性―――リーゼロッテが指差した先には青色の光球が一つ。 それは俗に言う探査魔法。ロッテとアリアの二人はその魔法弾を通して室内の様子を観察していたのだ。 ちなみに探査魔法の為の魔法弾は、訓練室の中にもう一つあったりもする。 「局内で質量兵器の使用許可なんて、クロスケも悪くなっちゃって。師匠の私も悲しいぞ~」 その横に立つアリアも、ロッテの言葉に頭を抱えるクロノへと愉しげな笑みを向け、からかいの言葉を投げる。 ますます立場の無いクロノは思わず盛大な溜め息を吐いていた。 「おいクロノ、大丈夫なのか?」 「ああ、心配ない。彼女達は僕の師匠だ……あまり認めたくはないがな」 「師匠?」 「そういう事~、よろしくね可愛い小ネズミちゃん」 「心配しなくてもチクったりはしないから安心して」 「は、はあ、そうですか」 「あんた等がクロノの師匠ねえ……」 口調に軽いところがあるが、クロノはこの二人の師匠を信頼していた。 勿論、初対面のユーノとアルフには不安しか残らないだろうが、まあそこは割愛。 今は口で信頼を促すしか、クロノには出来ない。 「それにしても彼、面白いわね」 「生身で魔導師を抑え込んじゃうなんて、上手く鍛えれば大化けするんじゃない?」 再会と初対面の挨拶も一段落ついたところで、アリアとロッテは話を本筋へと戻した。 アリアは好奇心を前面に映して、ロッテは好奇心を瞳の奥底に映して、ガラスの向こう側で魔法少女達へと熱心に何かを語っているヴァッシュを見る。 その体捌き、反応の早さはリーゼ姉妹から見ても異常なもの。驚愕にも値する。 ただ現状では脅威たり得ないとも、思考の片隅で二人は感じていた。 「「ま、でも―――魔法が『からっきし』使えないんじゃあ話にもならないけどねえ」」 脅威たりえない大きな要因はというと、魔法が使えないという、魔導師との戦いに於いては余りに大きすぎる弱点。 見事なハモりと共に放たれた言葉が全てを言い表していた。 「だってバインド一発で終了でしょ? せめてバインドブレイクくらいは使えないとねえ」 「幾ら反応が早くても、あの程度のスピードじゃ設置型には対応できないだろうしね。誘い込んでバインドで即終了だよ」 「攻撃も直線的だし距離とっちゃえばね。遮蔽物が多いとこなら、尚更こっちが有利だし。飛行魔法くらい使えれば厄介なんだろうけど」 「遠距離バインドでも、広域型の魔法でもOKだね捕まえちゃえば後は煮るなり焼くなりで」 「近距離、中距離に付き合わなければ幾らでも勝ちは見えるわね。長射程で広範囲の砲撃か、バインド、もしくは設置型で、トントン追い詰めてけば問題なし」 「ま、余裕余裕」 「あの子達の敗因は戦い方が正直すぎた事だね。もう少し上手く立ち回れば勝ちは充分に見えたんだけど」 「そうだねぇ。あの反応速度を相手に真っ向勝負は私たちでもちょっと厳しいだろうし。そこら辺は経験の差だろうね」 次いで息付ぐ間もなく繰り広げられる『ヴァッシュ・ザ・スタンピード批評会』にユーノとアルフは言葉を失う。 たった一回、数分にも満たない模擬戦を盗み見たでけで、ヴァッシュの弱点をつらつらと羅列する二人の使い魔。 成る程、最年少執務官の師匠という話に虚偽は無いのだろう。 その観察眼に、ユーノとアルフは驚嘆を覚えていた。 「あ、そうそう、クロスケ。一つ伝えたい事があったんだ」 と、ようやくヴァッシュへの酷評を終えた二人はクロノの方へと向き直る。 その表情に先程までのふざけた様子は在らず、真剣な顔でクロノを見ている。 その真剣な雰囲気にクロノも顔を引き締め、二人の方へ身体を向ける。 「まだ入院中のクロノは知らないだろうけどさ。今日はさ、結構厄介な奴が地上本部に来てるんだよね」 「うん、だから師匠の私達が警告に来てあげた訳。悪い事するならバレないようにやりなさいね」 「違うでしょうが……。取り敢えず今日の所は特訓を止めときなって伝えたくてさ。こんなヤバいトコ見られたら流石にマズいでしょ」 アリアとリーゼの伝えたい事はクロノにも理解できた。 本局からお偉いさんが来ているので、今すぐこの違法行為を止めろとの事だ。 リーゼ達の言葉に、クロノの内にも危機感が首を擡げ始める。 「で、その厄介な奴とは―――」 と、クロノが口を開いた瞬間、その扉は二度目の開閉を持って客を招き入れる。 その来訪にリーゼは言葉を止め、扉の方へと視線を向ける。 次いで残りの四人の視線も吸い込まれるように扉側へと移っていく。 そして、今度こそ全員が全員の表情が驚愕に染まる。 あちゃー、という呟き(ハモり)がアリアとリーゼの口から漏れた。 全開となった扉の向こう側に立つ人物は、時空管理局に名を置く者なら誰もが知っている大物。 ある局員はその人物を鬼と呼び、またある局員は悪魔と呼ぶ。 だがしかし、また別の局員は女神と呼び、更に別の局員は天使のようだと言う。 数多の屈強な兵士達にトラウマを植え付け、それでいて癒やしを与えてきたその人物の名は、 「ファーン・コラード三佐!」 第四陸士訓練学校の長たる熟女が其処に立っていた。 愕然の声を上げたクロノ・ハラオウンは、焦燥に満ちた表情でチラリと視線を模擬戦場へと向ける。 模擬戦場では二人の魔導少女に対して熱弁を振るうガンマンの姿があった。 勿論、禁則とされている質量兵器をその手に握って。 弁解の余地などない。完全な現行犯であった。 「あら、あなた達、何をしているの?」 お通夜ムードとなった室内にて、老女が一人楽しげに微笑んでいた。 ◇ 「君たちは強い。その年でそれだけの実力だ、あと数年もすれば僕なんかよりもずっと強くなると思う」 広々とした訓練室のど真ん中にてヴァッシュは魔法少女達と相対していた。 自身の圧勝で終わった模擬戦を振り返りながら、ヴァッシュは言葉を吐く。 視線の先では、なのはとフェイトが真っ直ぐに此方を見つめていた。 純粋な瞳であった。 「でも、なのは達は『今』力を付けたい訳だ。守護騎士達を止める為の力を」 そんななのは達を見ながら、ヴァッシュは拳銃を取り出す。 強い心を持った、優しき心を持った魔法少女達。 ガンマンとして荒野を旅してきたヴァッシュ・ザ・スタンピード。 次元を越えた邂逅の果てに、魔法少女達はガンマンへと師事を申し込んだ。 「……無茶はしないと、約束して欲しい。いくら強くても君達は子どもだ。本来、こんな戦いに参加すること自体が無茶苦茶なんだ」 そう言うヴァッシュの顔は何処か苦しげであった。 沈黙が続き、言葉がじんわりと染み渡る。 普段のヴァッシュらしからぬ言葉に、なのは達は思わず困惑の表情を浮かべてしまう。 「と、説教臭くなっちゃったかな? じゃあ、気を取り直して早速特訓といきますか。まず、なのは!」 「は、はい!」 唐突の名指しに身構えるなのはへと、ヴァッシュは何時も通りの緩い笑顔で問い掛ける。 「問題です。僕は、何でなのは達に勝つ事ができたでしょうか?」 質問に、再びなのはは口を閉ざす。 手も足も出せずに敗北した先の模擬戦。その敗北の理由はなんだろうか。 速度も火力もなのは達が勝っている。改めて考えると、総合的な能力はなのは達が勝っている筈だ。 「ちなみに反射神経と回避力ってのはバツね。確かにそれのお蔭で逃げ回れはしたけど、勝てはしなかっただろうし」 だが、圧倒された。 二対一で、破格の勝利条件で、総合的な力は上回っているにも関わらず、負けた。 その敗因とは何だろうか。なのはは俯き、顎に手を当てて少しの間、熟考する。 答えは直ぐに浮かんできた。 「……早撃ち、ですか……?」 「正解。僕は早撃ちがあったから、なのは達に勝つ事ができた。これがなければ、さっきの模擬戦なんて逃げ回るだけで終わってたよ。流石なのはだ、良く見てる。では次! フェイト!」 ズビシとフェイトを指差すヴァッシュ。 その口から再び問い掛けが放たれる。 「もし自分より総合的に上回る敵と相対した時、もしくは自分と総合的に同等の敵と相対した時、君はどう戦う?」 ヴァッシュの問い掛けは、問題というより質問であった。 総合的に上回る、もしくは同等の相手と聞き、フェイトの脳裏に守護騎士の将たる女性が浮かぶ。 次に彼女と戦闘する時、自分はどう戦うか。フェイトは少し考え、答えを呟く。 「……スピードで攪乱しながら接近戦に持ち込みます」 「そう、それが一番だろうね。なのはならどうする?」 「遠距離か中距離からの砲撃戦で戦います」 「やっぱ二人とも分かってるね。自分より強い相手と戦う場合は、自分の得意分野で勝負する。フェイトはスピード、なのはは砲撃、僕なら早撃ち、てな感じでね」 二人の回答に満足げに頷きながら、ヴァッシュはトリガー部を指に掛け、拳銃をクルクルと回す。 そして二人の前を歩きながら、言葉を紡いでいく。 「そこまで分かってるなら話は早い。特訓は二人の『得意分野』を伸ばしていくように行っていく。それもただ伸ばすんじゃない。誰が相手でも負けない位に、伸ばす。分かるかい?」 ニンマリと微笑むヴァッシュに、なのはとフェイトも頷く。 やる気に満ち満ちた瞳でヴァッシュを見詰めながら、魔法少女達はそれぞれの得物を構えた。 そして特訓が、始まった。 ◇ そして、ガンマンと魔法少女が織り成すそんな一部始終を、ファーン・コラードは見下ろしていた。 訓練室を見下ろす位置にある部屋にて腕を組みながら、愉しげにガンマンの師事を聞いている。 「彼、なかなかに面白いわね。名前は何て言うの?」 室内に漂うお通夜ムードなど何処吹く風、ファーン・コラードはマイペースにクロノへと語り掛けた。 その様子はまるで温和な良きお婆ちゃんだが、状況が状況だけに気が休まる事はない。 「……ヴァッシュ・ザ・スタンピードです」 「ヴァッシュ君ね。うん、面白いわ、彼。本当に面白い」 そう言って訓練室を見下ろすコラードの目は、まるで大好きな絵本を読んでいる子どものようにキラキラと輝いていた。 「ねえ、クロノ執務官。こんな言葉聞いた事ある? 『自分より強い相手に勝つには、自分の方が相手より強くなければならない』」 「いえ、聞いた事はありませんが……」 「そう。ふふっ、あなたもウカウカしてると、あの二人に抜かれちゃうわよ」 「は、はあ……」 それだけ言うと、コラードは訓練室へと背中を向けて出口の方へと歩いていく。 思わず驚愕に言葉を失うのはクロノの方であった。 ヴァッシュの得物がデバイスか質量兵器か、歴戦のフォーン・コラードが見誤る筈がない。 質量兵器の容認など、下手すれば懲戒免職ものの違反行為である。 それを見逃す等、通常ならば有り得ない。 「最近、目が悪くなってきてねぇ。遠くのものが良く見えないのよ。そろそろ眼鏡でも掛けた方が良いかしらね、クロノ執務官」 まるで世間話のように語りながら、コラードは扉の前へと立った。 軽い機械音と共に扉が開く。 コラードは薄い笑みを口元に讃えたまま、部屋を出ていった。 ほう、と部屋に残された誰もが安堵の息を吐いた。 「はー、ヤバかったね、クロスケ。最年少執務官質量兵器法違反で逮捕! なんて見出しが朝刊飾る所だったよ」 「本当にだよ、師匠たる私達まで被害こうむるところだったわ」 コラードが退室した扉を茫然と見詰めるクロノの背中に、ローゼ姉妹がのし掛かってくる。 姉妹の間で板挟みになりながら、クロノは考えていた。 何故、フォーン・コラードが自分達を見逃してくれたのかと。 「ありゃヴァッシュに惚れたね。アイツ、人を引き付ける何かを持ってるじゃん」 「……やっぱり局の中で訓練は危険だったかもね。本当に危ないところだったよ」 ユーノとクロノの言葉に同調しながらも、クロノは扉を見る。 彼等の後方、ガラス窓の先ではガンマンと魔法少女が言葉を交わし、訓練を続けていた。 ◇ 『フェイトはさ、僕の戦い方に似ているよ。スピード。誰よりも早く動いて、誰よりも早く攻撃を当てる。力も、技も、関係ない。戦場を支配する能力だ』 現在、フェイトはヴァッシュと近接の間合いにて打ち合いを続けていた。 高速移動でヴァッシュを翻弄し一撃を畳み込む―――という予定なのだが、如何せん上手くいかない。 フェイトの高速移動の全ては、ヴァッシュの尋常ならざる反射神経により見切られていた。 振るわれる漆黒の戦斧は、白銀の拳銃に止められ、または空振りで終わる。 『なのははそうだね……砲撃単体で見れば充分な強さだ。そりゃもうヤバいくらいにね。だから、当てるまでの技術だ。 近距離だろうと、中距離だろうと、遠距離だろうと、銃口を相手へと食らいつかせて砲撃を当てる。それが必要だ』 現在、なのはは高速で移動するフェイトへと狙撃の体勢を取っていた。 距離は凡そ十メートル。魔導師の戦闘であれば近接の間合いに位置する距離だ。 近接で見るフェイトの速度は、時折知覚の外へと飛び出る程に速い。 戦場全体を見渡せる遠距離であれば、ロックを掛けること自体はそう難しくない。 だが、近距離になると話は違う。一瞬で視界の外へと移動し、また一瞬で正反対の位置へと姿を現す。 レイジングハートの矛先はフラフラと右往左往をするだけに終わり、とてもじゃないがロックオンを出来るとは思えない。 だが、と二人は思う。 もしヴァッシュの反応すら振り切る速度で動けたのなら。 もし近接の間合いでフェイトの速度にすら反応でき、砲撃を当てられるようになったのなら。 それは自分達の求める『力』に大きく近付くのではないか。 守護騎士達を止める力。 アンノウンを撃退するだけの力。 ヴァッシュ・ザ・スタンピードを手助けできるだけの力。 道が開けた気がした。 後は鍛錬を積み重ね、前に進むだけ。 訓練を続ける魔法少女達の瞳は、無力感から解き放たれ、鮮やかな輝きを放っていた。 前へ 目次へ 次へ
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闇よりの使者 ◆LuuKRM2PEg アルハザードを舞台としたバトルロワイヤルという名目の、殺し合い。 プレシア・テスタロッサの手によって始められてから、既に二四時間が経過していた。 辺りは闇に包まれ、風が冷え切っている。 星々は輝いているが、それを見上げる者は誰一人としていない。 そんな空の下で、一つの建物がメラメラと音を鳴らしながら、燃え上がっていた。 静寂を破る火炎は闇を照らし、二つの人影を映し出す。 一人は、黒いマスクで顔を覆い、同じ色のスーツとマントに身を包む男、キング。 またの名を、魔王ゼロ。 本来は、世界を変えようと決意した少年、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの仮初の姿。 しかし今は、己の快楽の為に戦うカテゴリーキングの位が与えられたアンデットが、ゼロの名を名乗っていた。 その仮面を被るキングの前に立つのは、アンジール・ヒューレー。 本来は、遥か彼方の宇宙より地球に飛来した生命体、ジェノバの細胞を人間に埋め込む計画、ジェノバ・プロジェクトによって生まれた男。 しかし厳密には、ミッドチルダに流れたライフストリームと呼ばれるエネルギーから、ジェイル・スカリエッティが生み出したコピー。 アンジールは、ゼロと名乗る仮面を被った男の言葉に、困惑を感じていた。 この人物は、自分のことを『プレシア・テスタロッサ』が送り込んだ者と言った。 そして、手を組むのなら死んだ妹たちを生き返らせてみせるとも。 だが、そんなことは自分を騙す為の戯言で、本当は隙を突いて殺そうと企んでいるかもしれない。 しかし、ゼロは愛弟子であるザックス・フェアの名前や、既に折れたバスターソードの事を知っていた。 もしかしたら、この男と組めばクアットロ、チンク、ディエチの三人を、本当に生き返らせることが出来る――? (いや、ここには奴もいた。もしこいつが奴と出会ったとすれば……!) 思い出されるのは、既に名前が呼ばれたかつての親友、セフィロス。 可能性は低いが、あの男がゼロに情報を売った可能性もある。 だが、今はそんなことはどうでもいい。 この男をどうするか。 もしも、自分を殺そうと企むのなら、答えは一つのみ。 連戦によって体に疲労を感じるが、死力を尽くせばあの奇妙な盾も砕けるはず。 自分の世界では、バリアやマバリアといった魔法も存在する。 攻撃を防いだ防壁も、それと同じ種類か。 「何を迷っている? アンジール」 アンジールが思考を巡らせていると、仮面の奥から低い声が響く。 それは鼓膜を刺激し、彼の意識を発生源に向けた。 地獄の業火を思わせるような炎を背に立つゼロの様子は、まさに「魔王」と呼ぶに相応しい。 テロリストの仮面を被るキングは、アンジールの様子を尻目に言葉を続けた。 「先程の放送を聞いただろう? 貴様の愛する妹たちはもう誰もいない。皆、殺されたんだよ」 「――黙れッ!」 「だから決めろと言っている! 貴様は何の為に戦うか! 貴様が求める物は何か! そして、貴様は何を決意した!?」 激高は、呆気なくかき消される。 闇の中で響くゼロの言葉によって、アンジールの勢いは止まった。 表情から怒りが消えていき、再び元に戻る。 その様子を、マスクの下から眺めるキングは、笑みを浮かべていた。 しかしそれを声には出さない。 変声機があるから誤魔化せるかもしれないが、面倒は御免だ。 最も、そうなった場合はアンジールを始末すればいいだけのこと。 だがそれでは仮面ライダーカブト、天道総司の思い通りになる。 奴の狙いに嵌るのは、気に食わない。 今やるべきことは、餌をぶら下げる事。 「君が抱くクアットロへの思いはその程度か!? 君とチンクの絆はこの位で揺らぐ程度か!? 君がディエチに感じている愛情はこの程度か!?」 キングは、放送で呼ばれたナンバーズの名前を次々に言った。 そして、警戒心を解かせる為に「君」を使う。 一人一人告げる度に、アンジールの表情が崩れていった。 何ていう愚かなことか。 調べてみると、この三人はサイボーグらしい。 ならば、鉄屑で出来たガラクタの人形ということだ。 そうなると目の前にいるアンジールとは、人形にしか愛情を向けられない、愚かな男ということになるだろう。 このような奴の弟子になったザックスという人物は、哀れかもしれない。 出来ることなら、今のアンジールの顔をカメラに収めておきたいが、それは我慢だ。 もしも、タイトルを付けるのなら『ガラクタの人形を姉妹と呼ぶ、愚かで哀れな男』だろう。 仮面の下で笑みを作るキングは、愚かで哀れなアンジールを揺さぶるために言葉を続けた。 「そしてこの事実をオットーは知っている! 彼女もまた、姉妹の死に心を痛めているはずだ!」 「ッ……!?」 「君がやらずして、誰が妹を生き返らせるのだ!? 思い出せ。君にとって、妹とは何だ!」 ――アンジール様が生き返らせてくれる。私は、そう信じています―― ゼロの怒号を聞いた途端、アンジールの脳裏に一つの光景が浮かび上がる。 ようやく再会できた、クアットロの姿。 そして、彼女が言った最後の言葉。 ――私だけじゃありません。きっとディエチちゃんも、チンクちゃんも、そう信じているはずです―― ――だからお別れは少しの間だけです。私達のためにも、アンジール様は……このデスゲームで最期の一人になってください……―― アンジールの中で駆け巡るのは、クアットロの声。 傷だらけの体にも関わらず、彼女は残る力を振り絞って、自分に託した。 クアットロと、チンクと、ディエチと、また一緒に暮らせるという願いを。 ――……またお会いできる時を楽しみにしています―― 彼女はこの言葉を残して、逝ってしまった。 全ては、自分の力が足りなかったせいで起こってしまった、忌々しい数時間前の出来事。 そしてプレシアの元にいるオットーも、この事を知っているはず。 彼女はきっと、いや絶対に不甲斐ない自分に失望し、憎んでいるに違いない。 だが、どんな罵りだろうと甘んじて受けるつもりだ。 二人は黙り込み、炎が燃える音だけが響く。 そんなアンジールの様子が気に食わないキングは、次のアクションを起こした。 「…………所詮、君はその程度の男か」 「何……?」 「今の君を見たら、妹たちはどう思うだろうねぇ……?」 三回目の放送で名前が呼ばれた、キャロ・ル・ルシエの時のように、誘惑する。 今のアンジールなど、手に落ちるまでそれほど時間は要らない。 キングは確信を持ちながら、目の前の男を揺さぶり続ける。 「最も、君が一人で戦い続けるというのなら、私は別に……」 「待てッ!」 濁ったような声を、アンジールはかき消した。 仮面の下で、キングが笑みを浮かべていることを気付かずに。 「いいだろう……お前と手を組んでやる」 「良い返事が聞けて嬉しいよ、交渉成立だな」 「だが、分かっているだろうな……」 「心配は要らない。約束は必ず守る。でなければ、こんな話は持ち出さない」 アンジールは微かな可能性に賭けて、この男の提案を受け入れた。 キングが自称する魔王の名が、ゼロの名が、プレシアの配下であることが。 そして、妹達を生き返らせるという褒美が、全て嘘であることを知らずに。 屈強な兵士が、ただの人形と成り果てた事実に、キングは歓喜を覚える。 しかしそれを表に出すことは、しなかった。 「ではまずは、逃げ出したあの二人を追おう。市街地に向かうのはその後だ」 キングは提案を出すと、歩を進める。 その後ろを、アンジールは歩いた。 (ハハハハハハッ! 残念だったね、カブト。 君の狙いは外れたよ!) 心の中で大笑いしながら、キングは天道に対して侮蔑の感情を抱く。 あの男にバッグを少しだけ奪われた事と、ジョーカーで遊べなくなったのは残念だが、これで御相子だ。 それ以上に、高町なのはには仮面ライダーデルタに変身するという、楽しみも待っている。 正義の味方を気取っている女が、あれを使って暴走するようなことになればどうなるか。 どうせベルトの毒が生み出す快楽に溺れ、狂った挙句に人を殺すに違いない。 ならば、その様子を携帯のカメラに残してやろう。 (そして、ウルトラマンメビウス……死んじゃったんだね、君。弱いくせに王様に刃向かったから、罰が当たったんだな!) 先程の放送で呼ばれた、ヒビノ・ミライの名前。 恐らく、自分が遊んだ際にアンジールに殺されたんだろう。 諦めないなどと戯言を言っておきながら、この結果だ。 所詮、中途半端な力しか持たない弱者だったということ。 ウルトラマンであろうと仮面ライダーであろうと、自分に抗うなど無理だということだ。 (そういや、放送の時間が十分だけ遅れてたな……) キングは充足感を覚えている一方で、疑問を感じている。 放送の時間が、少しだけ遅れていたのだ。 これまでは、一秒のズレもなくプレシアは情報を伝えている。 それが今回に限って、何故遅れていたのか。 (どうなってるんだ?) 一方で、アンジールもまた考えている。 先程の放送では、七人の名が呼ばれた。 クアットロの名前以外は、呼ばれても関係ない。 自分のやるべき事はただ一つ。 愛する妹達の命を、取り戻すこと。 だが、アンジールにとって気がかりなことが一つだけあった。 それは、呼ばれなかった名前が存在すること。 (あの男……生きていたのか) 三度に渡って戦いを繰り広げた、あの男が生きていたこと。 自分と同じように、望まぬ運命によって望まぬ力を得てしまった、あの男が生きていたこと。 自分の境遇と重なって見えた、あの男が生きていたこと。 そして、自分の手で望まぬ運命を断ち切った、あの男が生きていたこと。 妹達を守る盾の役割を託した、あの男が生きていたこと。 (いや、もう関係ない……俺は悪魔になると決めた。ならば、あの男も例外ではない) アンジールは心の中で呟くが、あの男の顔が頭の中で思い浮かんでしまう。 振り払おうとするが、消えることはない。 続くように、あの男の声が聞こえた。 ――そんな方法で家族を守ったとして……その人達が喜ぶのか!?―― ――やっぱ……馬鹿みてぇか、俺?―― ――……もう無理なんだ……意志だけじゃあ抑えきれない……もう言うことを聞かない……今すぐにでも離れてくれないと……僕は、君を、殺してしまう……―― それらは、アンジールの中で次々と蘇っていく。 覚悟はとっくに決めたはずなのに、何故こんな声が聞こえるのか。 今の自分にとっては、雑音に等しい。 消えろ。消えてしまえ。 ――だって君も見逃してくれたじゃん―― ――ついさっきビルに叩き付けられた時のことだよ。……確実にトドメを刺せる状況だったのに君は攻撃しなかった。その借りを返しただけさ―― アンジールは念じるが、消えることはない。 それどころか、声はより一層増えていく。 そして、苦笑を浮かべるあの男の顔も。 声に比例するかのように、疑問も徐々に増えていく。 だが、今はそれに気を取られている場合ではないはずだ。 やるべき事は、妹達の蘇生。 アンジールの頭の中で浮かぶ男の顔。 もしも、もっと早く出会えてたら手を組めたかもしれない男。 戦場にも関わらずして、自分を助けようとした男。 そして、今もどこかにいるはずの男。 ――ヴァッシュ・ザ・スタンピードの顔と声が、アンジールの中で浮かび上がっていた。 【2日目 深夜】 【現在地 D-2】 【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード】 【状態】健康 【装備】ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔法と魔法少女たち、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード 【道具】支給品一式、おにぎり×10、ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ボーナス支給品(未確認) 【道具①】支給品一式、RPG-7+各種弾頭(照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル 【道具②】支給品一式、菓子セット@L change the world after story 【道具③】支給品一式、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』@仮面ライダーリリカル龍騎、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸 【道具④】支給品一式、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【道具⑤】支給品一式、いにしえの秘薬(空)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER 【思考】 基本:この戦いを全て無茶苦茶にする。 1.まずはアンジールと共に天道総司を追跡する。 2.他の参加者にもゲームを持ちかけてみる。 3.上手く行けば、他の参加者も同じように騙して手駒にするのもいいかも? 4.『魔人ゼロ』を演じてみる(飽きたらやめる)。 5.はやての挑戦に乗ってやる。 【備考】 ※キングの携帯電話には『相川始がカリスに変身する瞬間の動画』『八神はやて(StS)がギルモンを刺殺する瞬間の画像』『高町なのはと天道総司の偽装死体の画像』『C.C.とシェルビー・M・ペンウッドが死ぬ瞬間の画像』が記録されています。 ※全参加者の性格と大まかな戦闘スタイルを把握しています。特に天道総司を念入りに調べています。 ※八神はやて(StS)はゲームの相手プレイヤーだと考えています。 ※PT事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。 ※天道総司と高町なのはのデイバッグを奪いました。 ※デイバッグを奪われたことに、気付きました。 ※十分だけ放送の時間が遅れたことに気付き、疑問を抱いています。 【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】 【状態】疲労(中)、深い悲しみと罪悪感、脇腹・右腕・左腕に中程度の切り傷、全身に小程度の切り傷、願いを遂行せんとする強い使命感 【装備】リベリオン@Devil never Strikers、チンクの眼帯 【道具】無し 【思考】 基本:最後の一人になって亡き妹達の願い(妹達の復活)を叶える。 1.ゼロ(キング)と共に、参加者を殺す。 2.参加者の殲滅。 3.ヴァッシュのことが、微かに気がかり。(殺すことには、変わりない) 【備考】 ※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。 ※『月村すずかの友人』のメールを確認しました。一応内容は読んだ程度です。 ※オットーが放送を読み上げた事に付いてはひとまず保留。 ※キングが主催側の人間だと思っています。 Back 第四回放送/あるいは終焉の幕開け(後編) 時系列順で読む Next 救済N/EGO~eyes glazing over Back 第四回放送/あるいは終焉の幕開け(後編) 投下順で読む Next 救済N/EGO~eyes glazing over Back Mの姿/マイナスからのリスタート アンジール・ヒューレー Next Round ZERO ~MOONLIT BEETLES Back Mの姿/マイナスからのリスタート キング Next Round ZERO ~MOONLIT BEETLES